babble
かわいいあの子。講義はリモート。週に一度美術関係の授業だけはアクティブラーニング。以前より通うのが楽しみになったそうだ。
健全な子だと思う。東京生まれ東京育ち。ホワイトカラー第二世代。パパは商社の管理職。ママは元CA。今は専業主婦。しばしば夫婦でビアンキにまたがりゴルフスクールに通っている。なぜ知っているかというと、ゴルフスクールを主催している百貨店への道程に我が家があるからだ。3つ年上の姉とは趣味も性格も違うけれど2人でディズニーへ行く程度に仲が良い。色々とよく出来ているな、と思う。
父親同士が兄弟なのでイトコにあたる。私には女の子のきょうだいがいない。私が結婚して東京にやって来て、10数年ぶりの再会。前に会った時はモンスターズ・インクのBooちゃんよろしく我が家のデカい犬とキャアキャア戯れていたあの子が私の身長を追い抜きすっかり大人になっていた。何より驚いたのは、ほぼ私であったこと。お互い父親似。自分と同じ種類の素材で出来ている同性は初めての存在。どこか鏡を見ているような気持ちになる。怖くて、恥ずかしい。
ユマは私より背が高い。ハンサムな叔父に似て顔のパーツは私より派手だ。私が着物を普段着にすればとからかわれるのに対し、ユマは洋の雰囲気だ。同じ二重の垂れ目なのに。小麦肌に金髪のショートヘア。FUDGEがバイブル。ざっくりとした気取らない格好が似合う。しかし、遊び場によってファッションのテーマを変えてくる。さすが私のスイートベビ。意図せずシミラーになる。2人で歩いていると姉妹ですか?と言われる。とても嬉しい。
ユマは高校までラクロスをやっていた。私の地元はラクロスなんて無かったので、初代プリキュアじゃん。しか感想が無い。大学生になっても一向に日焼けに疎い。留学先がアメリカだったことも影響しているかもしれない。メイクがちょっと下手。温室育ち感があって可愛い。しかしユマの心はなかなかに大人びているというか、落ち着いている。飾らない。年齢のわりに自我同一性が成り立っているから、アルバイトなんかで大人たちに囲まれていて、ミスをしたとしても落ち込まない。自分との付き合い方が上手い。私の思春期はきれいに自己嫌悪と見栄にまみれていた。他人に評される見た目のことと、性のことが頭の中の8割を占めるような生臭いものだった。ハタチくらいになると、バイト先の理不尽をいちいち真正面から受け止めては気に病んだ。
育ち、という表現は好ましくない。愛情、というと種類がありすぎる。意図の差。どんな子になって欲しいと願ってもらえたか、成長を促すための姿勢および態度を取ってもらえてきたかの差。それを感じてしまう。
ユマはよく友達の話をしてくれる。高校時代からの友達の話が多い。進学で東京から離れる子は少数派なので、必然的に繋がったままだ。大学では怖いの半分、かったるいの半分でサークルに入っていないため交友関係が狭い。地方から新しいコミュニティを夢見て出てくる子たちとは違う。ユマは公立出身だ。公立、といっても、やたらと難関大合格者の多い、エンゲル係数高めの地元。いわゆる文京都市。人口は多いが閑静な所。穏やかで朗らかな子なので、色んなことを話してもらえるみたいだ。若い女の子はいつの時代も大変なようだ。最近インフルエンサーの同級生とお茶をしたらしい。ツーショットを見せてもらった。新宿のルミネ2で買っていそうな小花柄のシフォンワンピースにキャスケット。サンローランの大きいロゴの入ったショルダーバッグ。プリクラみたいに可愛い顔だった。これを書いている今、もう顔が思い出せない。それくらい整った顔。ちなみに撮ってあったプリクラの全部にわざわざ『ワセジョ』と書いてあった。その子には、大企業に勤めるパパが最近昇進して、ママがCA落ちだと自己紹介されたそうな。「CA落ち」ー新しい概念だ。落ちた事実すら自慢ワードらしい。なんじゃほら。理解が難しい世界だ。私はつくづく地方育ちで良かったな、と思った。地方のこぢんまりとした私立の中高一貫にはそんな文化は無かった。地元の企業や病院と同じ名前の子が6割以上だったから何も言わなくても各々の家のことは分かった。ママンらは専業主婦が基本だったが、頻回にお茶をすることなどはなく、皆ノンビリとしていた。あと、意味の分からないブランド品の持ち方もしなかった。シャネルのポーチをペンケースにしていたのはSTモに応募すると息巻いていたツタエダさんくらいだ。しかしツタエダさんは近隣の女学園の、後にCanCamモデルを経て女優さんになるあの子の噂を聞いてしまった。OGで現役モデルのRさんより凄いらしい、完全無欠の美少女。裏腹に全く気取らない良い子らしい。本屋でみかけて、そして応募を断念したとのこと。
ちょうどインフルエンサーの同級生ちゃんの、エルメスのブティックに入っていくストーリーが上がっていた。実際にエルメスのアイテムを持っているのは誰も見たことが無いそうだ。「エルメスの小物にお金使うんだ。REDVALLENTINOのワンピとか似合いそうなのに意外」と、言いかける。言わない。良い大人がそんなフンワリした嫌味を吐くだなんて大人げがない。ユマはストーリーを見て、「陶子ちゃぁん……、あのさー、なんて言っていいかワカンナイの、この気持ち」と呟いた。ボーイッシュな見た目に反して喋り方はふにゃふにゃとしている。人を傷つけたことの無い子は凄い。いや、傷つけられていないのか。違う。傷つかないのか。ノン、傷が一瞬で治るのか。分からんが。他には女子アナ志望の子の裏垢などを拝見した。キラキラしていた。「この子客観的にみて女子アナいけると思う?」ユマが真剣な面持ちで尋ねる。「将来オッジェンヌとかになりそうだね」という渾身のギャグが滑る。ユマたち世代に取っては『雑誌の読モ』といのは取り立ててステイタスではない。時代、時代よ。
「写真じゃ伝わらない系の可愛さの子が好きなんだよねえ」ユマが呟いた。「私もそう思うわ」と返した。都会育ちでも色んな子がいるのだな、と知る。島とかを所有しているような子は公立には居ないのだそうだ。同級生たちにはエルメスのストーリーは凄い、羨ましいとチヤホヤされる行為であるらしい。また、東京は色んなレベルの私学があり、賢い所、お金のある所、グレーゾーンの子たちを集める学校に至るまで多種多様とのこと。フレッシュなデータが増えた。珍しい喉越し。
ユマはブラウンのリップが良く似合った。目をキラキラ輝かせて喜んでいた。大人になると初めてのことに喜ぶ現象はなかなかお目にかかれない。きゅんとした。「今度またお化粧教えてほしいな」とLINEが来た。いつまでもかわいい子でいて欲しい。ユマは両親からBigbabyと呼ばれている。念がこもっているな、と思う。
ブレイクタイム
もうすぐいとこの誕生日だ。CHANELの新作リップを買った。昨日発売日だったらしく、欠品している色もあった。みんな情熱がすごいな。モマンとほぼ同じ色が出ていた。Ver.マスクにつかぬ〜Updated〜。似合うだろうなぁ。
マスクに付きづらいリップは持っていなかった。自分用に他の色を購入した。大切なのは彩度だ。艶が無いタイプは白みの加減が合わないと途端に顔がボケッとして冴えなくなる。しかし鮮烈すぎると洋服を選ぶ。72番が良かった。ICONIQという名前が可愛い。今手持ちにない赤々としたリップ。夫は嫌いらしいがめちゃくちゃ似合う。シンプルな服のとき用。しばらくブラウン一辺倒だったので緊張している。似合う色だと目がピカッと光って見える。よい。
ずっとクリニークのエスプレッソポップとD&Gの120番を使っていた。とくに不満は無かった。
エスプレッソポップはクッキリとした澄んだブラウン。名前の通りコーヒー色。深煎り。奥行き感がある。ほのぼのとしたモカブラウンやテラコッタとは全く異なる。真夏につけると妖しい感じになるので気に入っていた。熱帯植物。ブラウンカラーのドラセナやアンスリウム。外気温の暑苦しさに対し、無感情でシーンと佇むアノ雰囲気が出る。冬は冬で空気全体の冷たさと良くマッチした。余計なお色気感が無いため、「ん?化粧?そんなに頑張る気無いです。私が興味あるのは陶磁器ですよ」という感じの悪さを出せる便利アイテム。しかしながらファーとの相性が抜群に良く、唇にたっぷり乗せた途端にヴィランに変身できる代物。これを作っているのがそこはかとなく健やかなイメージのクリニークなのが面白かった。きっと今はほかでも似たようなのがあるだろうな。NARSとかADDICTIONあたりが出していそう。偏見だけど。
D&Gのミスシシリーの120番は、スッケスケの赤みを控えたブラウン。2年前?はまだ伊勢丹新宿本店のポップアップでしか入手できず、外資系のブラウンリップの展開も古っぽいローズブラウンばかりだったので珍品だった。ロバートの秋山氏にそっくりの男性BAさんがすてきにメイクしてくれて、アナタならイケるわとのせられてまんまと買った。何故か好きになるのは男性の美容師さんやBAさんばかりだ。コンセプトに沿って仕立ててくれる。セルヴォーグで若草色やシルバーグレーのアイシャドウ、水色のマスカラを買ったときもそうだった。イエベとかナンセンスなこと言わない。女性のBAさんは流行っているだの、売れているだの、目が大きく見えるだのと言ってくる割合が高い。
120番はケーキの上のシュクレフィレみたいな感じ。意味あんの?ってくらいシアー。そこが最高にロマンチック。透け透けの中にチラチラパールが光ってキュート。これは元の唇の血色が良い若いお嬢さんのためのモノ。実は自分の唇が元から真っピンクなことをちょっぴり不便だと思っている。イケてる感じになりたいけど、テラコッタやオレンジのマットリップが似合わない。どうしても、もとの瞳や肌の輝きが勝ってしまう。それを無視して塗りつぶすのは最高にダサい。NG。そんなお嬢さんがピンクの唇にミーッっと塗ると、つやんとブラウンのフィルターがかかる。元の血色感と合わさると、キャラメリゼしたような唇になる。半トーンだけ大人になる。そういう奴。そういうヤツです。
私は可愛い女子大生じゃないけど、ニュアンスだけつくこのリップは便利だ。グロスの皮膜感とは違い、オイルの薄い艶感。すっぴんの時にこれを塗って眉毛と髪の毛をウエットに仕上げるだけでそれっぽい。抜け感と化粧感のバランスが取りやすい。どんな服にでも合う。ド直球な甘ったるいバニラの香りもまた良い。唇の色がピンクなうちにこういうリップを楽しんでおきたい。一見トンチキな品だけど汎用性が高い。同じシリーズでレモンイエローやフューシャのカラーがある。一体いつ使うんだろうというお祭り感。セルヴォーグのイエローグロスが流行る前からD&Gはとっくに踊っていた。
2つとも仕上がりはお気に入りなんだけど、ゆるい液のためマスク生活には全く持って不向き。口元に色があるだけで気分が締まるからまたリップを探さなくては。シュウウエムラにヴィランになれそうな色があったから来週見に行こう。ファーを纏う前までに欲しい。
この冬はフンワリした色や質感のアイテムを使う予定なので、合わせるためにベージュも欲しい。しばらく使って良かったら60番を買い足す。透け透けのパーリィベージュで可愛かった。コーデが浮かぶ。例えば、クラシカルなミニワンピ。足元にはカプリコーンモヘアソックスの新作のフワフワバージョンの子。靴はストラップシューズかバレエ。他には、ハイネックのリブニットにレザーのハーフパンツ、ニーハイブーツ。首元にモヘアのマフラーを巻く。来月NARSからもベージュのシリーズが出るようなので待機するか悩む。コーデが完成しない間って落ち着かない。
その昔、大好きなうつわ屋のご主人に「うつわを手に取ってごらんなさい。どういうものを盛り付けるかが浮かんできたら、あなたにとっての良いうつわですよ。そうじゃないものは無理して手に入れなくたって良いよ」と言われたことがある。作家もののうつわは二度と手に入らないから、悩んで買い逃したり、不要なのに買ってしまうことがしばしばあった。見抜かれていた。その日は深煎りのコーヒーがよく似合いそうなカップと、バターやクロテッドクリームを使う分だけ盛ってテーブルに出す用の小付を購入した。どちらもよく食卓にのぼっている。うつわ以外の買い物の時もよく蘇る言葉。最近調子良くコーデが浮かぶから財布の紐がゆるい。
血継限界とか真血とか
子供の頃は家族の服装が嫌いだった。どうしてそんなにシワシワや折り目のある生地なのか。体のシルエットと違うヘンテコなカタチなのか。所々がゴムになっているブーツも変だと思っていた。しかし、お店の人が必ずお菓子をくれるので毎度ついて行った。中でもフロランタンと、オールスパイスのクッキーが大好きだった。小学生になって値札が分かるようになると、なんで仕事の関係者でもないお店の人たちが親を「先生、先生」なんて呼んで高い声を出すのかが分かった。ウワワッと広がるスカートに12万円の値段がついていた。バブルなんてとっくに弾けているのに。
母は優しいので授業参観にはネイビーのツイードのセットアップで来てくれた。けれど、ボタンがチャイナボタンになっていた。やはりどこか違った格好だった。その格好は可愛いと思った。
中学生の頃は老け顔すぎて似合わないためSEVENTEENはあんまり読まなかった。ませくってCanCamを読んでいた。徳澤直子さん派。レモンイエローのツインニットを着て、かごバッグにスカーフを結んで完全に赤文字系の格好をしていた。
転機は兄のバンド仲間がPerfumeにハマり、私も影響されたことにある。当時マイナーであったが日本のバンド界隈にはPerfumeのファンを公言している人たちが一定数いた。何故かクラブ系の元々テクノが好きな勢ではなく、バンドマンが。セラミックガールとパーフェクトスターパーフェクトスタイルとスーパージェットシューズのカバーが好きだった。Perfumeの衣装が市販品だったので、その事実を知るなり、真似するようになった。
CARVENを選ぶようになると、親はとても似合っていると褒めてくれて嬉しかった。
それから時は経ち自分のお金でSeebyChloeやらmameやらIreneを買うようになった。大げさな襟や袖のディティールやモダンなプリントに惹かれた。何より、Perfumeになれたようで嬉しかった。
何故Perfumeが好きかというと、彼女たちは巫女だからだ。あえて人間らしい感情表現はせず、ただ世界観を伝えるのみというのが異質に感じられた。完全に中二病ホイホイ。中二の私には彼女たちのシンクロしたパフォーマンスは見えない何かを呼ぶように、召喚しているように感じられた。当時流行っていたエロ可愛い私が会いたくて震えて君に出会えてよかったとfeat.していた歌詞に共感できなかった。留学(トラウマ)により洋楽もあまり聞かなくなり、さらにのめり込んで行った。歌詞やメロディや歌声が好きなアーティストは他に沢山いるが、Perfumeは「好きな歌手」のジャンルではなく「好きな巫女」。「好きな寺社仏閣および寺院教会」と同ジャンル。
最近買ったものの記録。バロックパールのネックレス。シンプルな格好の時に合わせる用。日本橋をうろうろしてANAYIで買った。中学からの友人がANAYIはパールの卸と契約しているからオリジナルのパールアクセは割安だと教えてくれたのを思い出した。本当かしらん。照りはそんなに良くないけど確かに割安だったから気にしない。保守すぎたら意味が無いから淡水でじゅうぶん。夏にARROWSで買い損ねた恨み、セレクトのやつだと知らずまんまと買い逃したつらみを晴らした。友人のママの参観日コーデは私の憧れだったことを思い出す。リボンタイ、フレアスカート。ベージュのパンプス。フェミニンでエレガント。あれはANAYIだったのか。
銀座三越でロンシャンのカスタムオーダーイベントをやっていた。MARNIのデッカい子は役に立っているが、重いからなーと思っていた。断捨離で旅行バッグを捨てたばかりだったのでオーダーしようと思ったら、旅行サイズのやつはキャンバス地オンリーだった。キャンバス地は服を擦るから嫌い。おまけに顔にも似合わないから却下。通勤用にナイロンのA4サイズで作ろうかな。一面にでっかくお馬さんの刺繍を入れたら可愛いかなぁと思ったが、通勤鞄にそんなにお金をかける気がしなくてやめた。A4サイズの何かを持ち運びたい時はmeのプリーツバッグか夏に買ったプチバトーのトートで良い。
ふと気づく。はぁ。なんてこった。結局私はmameを着ている。mameはミヤケさんとこ出身の人のやつだ。私の親族はなぜか一同にミヤケさんと呼ぶので習慣づいてしまった。この癖も直したかったのに。まんまとmeの胸元のカットが妙に似合うニットを着ている。meのサブバッグを持っている。最近1番褒められた靴は母のお下がりのPlantationとヨーガンレールのもの。どちらもフラット。
あんなに嫌だったのに結局実家の人の好むものを選んでしまっている。これが血が騒ぐってやつなのか。教えて下さいジャンプの主人公たち。
新しい職場ではスクラブを着ない。制服だと常にポケットがあったけれど、私服生活はポケットの無い服のときに困る。お手洗いも使い捨てのペーパータオルが無い。初体験なため驚いた。来月旅行にも行くことだし、常に下げていてもおかしくない小さなショルダーバッグを探した。LOEWEのやつは可愛いけど飽きる予感満点。ATPは可愛いけど割高。結果the dilettanteのミニショルダーを買った。無駄な存在感は無いけれどさり気なくアシンメトリーなつくりが可愛い。スマホとハンカチとメモ帳が入るサイズが丁度いい。この間買ったパールネックレスと合わせてもATPのやつ1個分。かなり良い買い物をした。
あと今月はSUQQUのチークの予約をする。CHANELの新発売の艶が残るけどマスクに付きづらいらしいリップも買う。そして愛弓さんのHIROSAIが楽しみ。最近のパキッとした色出しの国内ブランドでは、イウエンマトフが気になっていた。しかしサイズ感が合わず試着室で泣くことが多かった。HIROSAIはどうなのかなぁー。ECは怖い。
スマイル
「なんとなぁく分かってきたと思うけど、この仕事って誰にでも出来るものじゃないのよ。モノノベさんにはずっと居て欲しいんだけどなぁ、私から推薦して昇進とかもお願いできるんだけど」新職場の上司は昔むかし保育士をしていたそうで、何かにつけて「よく出来たねぇ~~っ」と褒めてくれる。のぼせそうになるのできっと今だけだと言い聞かせている。彼女は目が合うといつもニッと笑う。私を好ましく思っての笑顔なのか、自分の思い通りに物事を運ぶ手段としての笑顔なのか。
ヒトは生まれながらに社会的生き物だ。新生児微笑というものがある。新生児の頃、親に育児放棄をさせないために笑顔を振りまく期間が存在する。笑顔は己の生存のための機能として備わっている。情けは人のためならず。
やっぱり私は『神経の細い子』だ。いくら分析して俯瞰で見ようと思っても、この世の全てのスマイルがただの快刺激としての笑顔であって欲しいと願う。どこかで期待している。幼稚だ。チャーンもバァブゥーも言えないレベル。イクラちゃん以下。陶子じゃなくて筋子。今旬の。『神経の細い筋子』なんか強そう。『涼宮ハルヒの憂鬱』カラオケの履歴にありそう。『とある魔術の禁書目録』誰かの黒歴史作ってそう。(全く内容知らんけど)
というかわざわざ分析すること自体が『細い』のだろう。ヒトはオバサンやオジサンになると図太くなるらしいから、まだ青いってことなんだろう。オバサンを即座に通り越してサクッと『おばぁちゃん』になれるよう日々努力をしたいところ。
昼休みにコートが入荷したので、と電話があった。銀座三越のENFOLDへ寄った。今年のノーカラー コートはでっかいボタンが付いていて、遊び心のある仕上がり。カジュアルすぎて私の顔には似合わなかった。私が着るとnagonどころかZUCCAに見える。ZUCCAは元からシュッとしている顔とオーラの人が着るもの。ずっとセレショにもELLEshopにも取扱があったのに殆ど目を引かなったmizuiroindを今季はモトーラさんに着せていて、はじめてホウホウと認知した。そのような『パッとする』バランス感って大切。元の素材がユルめの私はもーちょいコンサバで締めないと駄目。てかZUCCA、UN3Dに寄ってきてない?もっとホッコリしてなかった?え?
ピンと来ない私の表情を見るなり、剛力ちゃん似の刈り上げショートが似合う店員さんが黒のチェスターを持ってきてくれた。ビッグシルエットはなぁ……苦手なんだよ。と思いながら着ると、マァ綺麗だった。例年のものと違い、今年のものは襟幅が狭い。アームホールも細い。もちろん袖は折り返しができる。肩周りのみゆとりが有り、ドロップになっているので中の服が面白みに欠く時は背抜きにもできる。後ろ身頃はセンターシームが入っているので着膨れ感が出ない。何より裾の収まりのタイトさが他にない美しさだ。黒のコートは無骨な印象になるので敬遠していたが、リバーの柔らかな素材感と腰から下の先細りになるシルエットが重さや無駄な存在感を打ち消してくれていた。
ビッグチェスターって何。私が着ると後ろ姿はまるでノートルダムの鐘つき男。あんまり良い例え方ではない。チェスター着るならコンサバブランドでジャストサイズを探す。と思いながら数年。コンサバブランドで試着しては、うわこれ私が着るとただの地味な人。これにお金をかけるのか。と思いながら数年。当時夫に意見を求めたが「そもそもね、ロングチェスターって難しいアウターだと思うよ。街中で着てる女の子も男も多いけど、身長とか骨格とかにかなり左右されるから、俺的に着こなせてる人あんま見かけない」「陶子さん、ホラ、骨格がテテンとしてるから」とのコメントだった。夫はわりと寛容だし言葉遣いもきれいなタイプではあるが服装に関してはズバリと辛め。大学生の頃某誌の読モをしていた彼は未だに展示会への招待で服を買う。未だに学生時代に買ったコートを着こなしている。ミーハーで芯のない私には真似出来ない所業。凄いなと思っている。
チェスターコートは買わないと思っていたが思わぬ所から見つかった。適度に遊べるチェスター。ネットのモデルやトルソー画像では無感想だったので大穴だった。アウターは顔立ちとの相性が大きい。やっぱり服は試着しないとダメだなと痛感した。今までENFOLDのコートは良いねと言って貰えてきたから、今年も褒めてもらいたい。綺麗だねと言われたい。
この数年、異常気象で東京は暖冬だったそうだ。初めての本当の冬が来る。備えあれば憂い無し。寒くても笑うために色んな準備をする。
ここは銀座
定期で行ける範囲が広がった。自分が色々偉いから褒美を買おうと定時ピッピした。エレベーターの中でお気に入りの帽子を頭にポンとのせた。出勤時は被っていなかった黒のトーク帽。レザーのベレーを買おうとした時期があったけど辞めてよかった。一歩間違うと田舎の女子大生みたいになる。それに来年にはダサくなっていそう。私みたいな平和な顔の人間はウールフェルトが似合う。クタッとした素材はだらしくなく見えるからトーク帽くらいカチリとしていたほうが賢くみえて可愛い。いつだったかツイードのキャップを被った時に爆笑をお見舞いしてくれた夫も珍しく褒めてくれたので気に入っている。他の友達にも沢山褒めてもらった。自分的に可愛い格好でESTNATIONに向かった。
引いた。一階がアウトレットになっていた。商品数が少なくガランとしていた。レジーナピョウのボタンが可愛いピンクのジャケットが40%off。特に欲しくはなかった。二階に行ったがニットもブーツもこれといって欲しいものは無かった。コスメコーナーに最近LOVEなビュリーのハンドクリームが置いてあり、パケがめちゃくちゃ可愛かった。仕事中元気が出そう。買おうかと思ったが、特段良い香りでもなくあまりにもコッテリして馴染みが悪かったので辞めた。乾燥が酷い人には好評らしい。私の知っているESTNATIONと違っていた。もうあまり行くことはないかもしれない。じゃあESTNATIONはどこにあるんだろう。新宿店より銀座店が好きだったんだけどな。
そのまま向かいのLOFTへ行った。銀座店は他店で扱いの少ないコスメが置いてある所が好きだ。アルテヤオーガニックのローズウォーターを買った。薔薇の香りのコスメを嗅いで、毎度「こんなの薔薇の香りじゃない」と言う私が「これは薔薇の香り」とジャッジした珍しい品。保湿力は特に無い。ただ香りがスーッと入る。この香りだけでホルモンバランスが整って全ての肌荒れが治りそうな気になる。それくらい心を揺さぶる。十分な効果だ。オーガニックコスメにありがちな「本心では凄く好きって訳じゃないけどこれを好きって言ったらお洒落と思われそうな柑橘やラベンダーの香り」とは違う。そもそも皮膚は排泄器官だから化粧品で解決しようとしても、、ねえ派。だから化粧水は別にコッテリしていなくて良い。ハイうざい。私は鬱陶しい。
OSAJIも置いてあった。萎んでいたテンションが上向いた。ディレクションしているAYANAさんのファンだ。彼女の書く文章が好きだ。美容雑誌や美容垢について、実際の若者ではそんなに使用されていない若者言葉を大げさに載せたり、一体誰視点なのか謎な表現が多いと感じている。共感しづらいのでたくさん飲めない。ここしばらくの情報収集は信頼できる友達かファッション誌かBEAUTYdept。それくらいの量で十分だ。実は以前からOSAJIのスキンバリアBBを愛用していて、それ以来輪をかけてAYANAさんを信頼している。私はシリコンやポリマーで荒れるのでケミカルファンデほぼ駄目だ。かといってオーガニック系はヨレやすかったりむかしの日焼け止めみたいな色具合だったり経時的にくすんできたりなどして苦手だ。しかし、OSAJIの BBは良い。某スメキッチンのバズりクッションや韓国コスメのアレや某皮膚科のカラーバームより。ピッと薄ーく密着する。何かが突出してはいないが、素肌っぽく、汚くならず、荒れず、全てが丁度良い。個人的に期待値が低かったので凄く喜んでいるが、太鼓判を押されていたとしたら「それ程でも?」となりそう。なので友達には話していない。ハンドクリームも良さげだった。値段も1000円。今度伊勢丹の通販で買おうと思う。
お昼はサラダだけだったので、アップルパイでも食べようかと思って東急プラザに寄った。リバティのビッグトートが可愛かったからまた見たいなぁと思ったら、輸入のセレクトショップは軒並み撤退していた。よく分からないアウトレットの服や集英社ハッピープラスストアの実店舗になっていた。国産のデザイナーズジュエリーのセレクトショップも無くなっていた。辛すぎる。ショックでヴェルメイユを覗き忘れた。グラニースミスは思ったより客が多かった。結局根室花まるで程々に良いネタをチョコっと食べた。根室花まるはそれなりに美味しくて好きだ。トリトンは本当にダメなんだけど食べログの点数があんまり変わらないのが不思議でならない。今度は金沢のところに行ってみたい。もう私の好きな銀座は無いのか。もう戻って来ないのか。ここだけは富裕層が守ってくれると思っていた。一体何をしているんだ。そりゃ東急プラザの中なんて本丸じゃないけど、余裕のあるヒトの余裕で守ってくれると思っていた。そもそも日本には富裕層など居なかったのか。Covid-19に対して、久しぶりに恨めしく感じた。元々客入りの悪かったSIXはどうなったんだろう。私の好きなジャンフランソワはまだ生きてるのか。お正月はジャンフランソワのガレットデロワじゃないと嫌だ。それかマンマーノ。ブルディガラのじゃダメなのに。悲しい。また月曜日銀座に偵察に行く。
水泳は見学します
この若さで職歴の多いこと。結婚で正統なキャリアから逸脱した。というか諦めざるを得なかった。自己都合退職ではないことに出来るので飽きっぽい私には結構便利だ。今月、ド臨床から技術へ転職した。
好き勝手に泳いでいた。乗り込んだ夫のゴンドラは私が操縦する必要が無かった。ついには揺られているだけの無刺激に病みそうになり、絶対に戻れる距離にいると約束をして、周りをバチャバチャしていた。むかし船に乗っていた時は下が目に入るなり、あの泳ぎ方はフォームがダサいだの推進効率が悪いだのと思っていた。どこかの島へ着いたら特別な人間としての価値が与えられ、幸せなれると信じていた。そのために常に急いでいた。はやく船を操縦できるように、スピードが出せるようになりたかった。しかし今は、泳いでいる人のことが分かる。泳ぐ者にしか味わえない浮遊感、しょっぱい味、水深に広がる景色の残酷さと美しさ。目的地に何があるか分からない、着く頃にはどうなっているか分からないのに速く泳ぐことに価値は無い。そう気づいた。だからもう泳ぎに飽きたとしても船には乗らない。今は自分の感覚刺激のほうが大切。例え犬かきであろうと。
なんだか成長したワタシ☆っぽく書いているが若年者の脳は学習効果を急がせるために、より不安を強く感じるようにできている。不安定に不安感を感じなくなるというのは、ただの加齢変化だ。人間もただの動物だ。それだけの話。はやく魚になりたい。
夏に協会から会報誌が届いていた。covid-19の影響で学会や細々としたライセンスの研修がオンラインになったと書いてあった。中には私の目指していたものも含まれていた。夫に概要を見せると「割に合わないね」との一言だった。確かにそうだ。好きに泳げる今は価値が見出せなかった。
技術の職場は途絶に業務量が多い。これでもcovid-19の影響で十数個減ったというのが驚きだ。所属部署の役職者が過労で2名ほど休職中だ。でしょうね。としか思わない。もともとは電カの入力ばかりだったので、10年ぶりにOutlookを使った。庶務課への返信の文字を青色で送ってしまった。オフィスワーカーの方々はまじで引くだろうな。
所属課のメンバーは穏やかで頭の回転の速い人たちだ。ホモサピ上級者。相手の気持ちを考えて、積極的に感謝の言葉を伝える。和むようなお茶目な発言をする。気を利かせて仲間の作業をフォローする。神はディティールに宿る。ニュアンスで空気はできる。それらは人を支配する。1週間勤めての感想は「平和」だ。マトモな人と接するのが久々な私は、幸せすぎて怖い。この平和をなかなか信用できないでいる。上級者たちなだけに裏でとんでもない冷戦が繰り広げられたりしていそうで怖い。迷い犬のように入職したが、冷静に考えれば新卒で入った病院よりもかなり難関な場所だ。厳しいふるいにかけられてきた人たちだ。きっと素養というやつだ。今までの誰でもOKな場所とは違う。信じるんだモノノベ。
ここに来て新しく大きなことを知ってしまった。私がずっと海だと思っていた物は実は水槽だったのだ。自分で泳げる力を身につけた私は良くやった、なんて思っていたら、その全ては枠組みの中の話だった。海だと感じているみんなは、現在進行形でその事実を認識していない。なんか怖い図式だ。
とりあえず1週間はプールサイドから見学する。なんとなく取っておいた夏の会報誌を再びめくると、水槽の監督業務に従事している者は全体の0.4%らしい。なるほど就活時に必死で内情をリサーチしても情報が見つからなかった訳だ。納得。
船の舵取りはコントロールが大変だった。自分の体で泳いでいる時は好きにできて良いなと思っていた。今度の監督業は座っているだけだ。体力が減らない。凄い。
業務内容は向いているようで褒められてばかりで大変楽しい。この出会いたちが良縁とやらだと良い。もちろん選んで行動してきたのは自分だけど。迷い犬が重宝されることもあるんだな。犬かきもやってみるもんだな。なんて思った。おばちゃん臭い。またひとつ加齢変化したってことだ。銀座へお祝いを買いに行こう。
縁切り
GODIVAは選ばない。その価格帯ならLeonidasにする。赤坂見附のそういう所が好きだ。どうやら私はLeonidasと縁があるようだ。地元にいた頃も家の近所にあった。狙った訳では無いがこっちに引っ越してきてからも家の近所にある。都内のLeonidasのある所は大体私の好きな土地だ。
人はまいるとまいるのだ。豊川稲荷の分院に行った。TOKYOでは縁切りで有名な神社。私の目的もそうだ。七福神、お地蔵さま、神社内のすべての神さまへお賽銭を奉納した。狐さまのところには絵馬までも。いつもゆるゆるでバチあたりな私にしては珍しい行動だ。
なぜ参っていたかというと、ハラスメントを受けていたからだ。労基違反。もちろん入職時から分かっていた。職場は自宅から徒歩5分。休憩時間に家に帰れるからまぁヨシ、と判断したのは私だ。10月で潰れる職場を9月末日をもって退職した。早期退職だ。ほんとうは早期もクソもない。職場が閉業するのだから雇用保険加入のない私が経済的にシームレスな移行をするのは当たり前だ。自己都合退職ではないから「疲れたし、一旦仕事辞めてゆっくり休んで~」なんてノリでは無いのだ。
嫌だったのは無論専務とその親族の従業員である。専務は私くらい背が低く、小太りでギョロっとした目つき、いつも額に脂汗が浮いている男だった。色々無理。専務のパパはやり手の社長だった。専務はパパのコネの中でしか生きたことが無い。コンプレックスの塊で、他人が賢いという事実が気に入らないのだ。
私が早期退職を伝えた時、私のセリフが終わる前に「ぁーーーいいよいいよいいよ!ウンウン!ぜーんぜん!」と捲し立てた。YESを表明しさえすれば優しくて理解のある経営者を演じきれていると思っているのか。間合い、ディテール、含ませ、すべて下手。つくづく下品だった。捲し立てるスピードに苛立ちと焦りがハッキリと見えて気持ちが悪かった。ついでに専務の親族の従業員(母親くらいの年齢の女性)も私への嫌味を繰り出してきた。お耳をドーナツにしていたので内容はあんまり覚えていないが「若いのに自分を大層な人間であると思うな。私の若い頃の苦労がドーチャラ、この仕事は経験がコーチャラ、昔医師会に勤めていた時はナンタラ」という話だった。はて。持っている免許資格が違う。医師会に勤めていたといっても彼女はたぶん事務の手伝いだろう。職域は聖域というのが臨床家のルールだ。他職種へのリスペクトが何よりも大事だ。いくら私が年下であろうと、平気で域を超えた発言ができる時点で、大した仕事を経験していないことが分かる。ようは私が若くして免許を取って週4しか働かないで暮らせているのが気に入らないということだった。馬鹿みたいだ。「いつも自分のこと凄いみたいに話すけど、誰もアナタに興味ないのよ」と言われた。『凄い』とは。私はその人に興味を持ったことが無いので何かを聞いた事は無いし、向こうに聞かれたことしか答えていない。大して会話をした覚えが無いので流石に驚いた。流石は専務の親族だ。血は争えん。自我が幼く相対評価で他人をみる。専務御一族には現場と関係が無いので興味を持たなかった。そして大した注意を払ってこなかった。ダルーーーーー。
現場の人間関係のトラップには注意していたので円の満。お姉さん方や後輩らとはまたプライベートで遊ぶ約束をしてニコニコと別れた。マタナーーーーー。
他にもひとつ、縁切りを願った理由がある。それは顧客たちからの念だ。私を助けてくれなかった、私を裏切った等という強烈な念が飛んでくるのを感じた。飛ばさないでいただきたい。雇用を保証しないで私を雇うという経営方針にのっとっただけなのだから専務へ飛ばしていただきたい。
いくら差別だと言われようとしばらくは北関東出身者とは関わりたく無い確かなmy heart。打率が良すぎる。10割が好ましくない人間だった。オールじゃないか。絶対良い人だって居るはずなのに。北関東出身者不信病だ。結構ゴロが良い。
どうか下品な人々と縁が切れますように、これからは良い縁に恵まれますように、と狐さまへお願いした。夫婦で凶のおみくじを引いたので身代わり地蔵さまに代打指名しておいた。帰りに表参道のCIBONEと青山のフリッツ・ハンセンに寄ってエルメでお茶をした。せっかく夫が甘やかしてくれたが、客層が好ましく無かったので青山店はたぶん二度と行かない。夫はデセールについて「チョコが重くて甘すぎる。ケーキをテイクアウトしたほうが良かった。チョコが恋しいお口ならLeonidasで十分だったね。」と言っていた。私も同感だった。次の職場では良い縁に恵まれますように。帰ったらLeonidasにも参拝しておこう。