青色信号

雑念

みずがめ座

出品していた鞄が売れた。BIOTOPで買ったものだった。ちょうどその日に行く予定だったから笑ってしまった。白金台駅の無機質な感じが好き。コンビニや売店が無くて、地下の細長い穴の中を乾いた風が吹き抜ける。他の濁った駅とは違う。相変わらず乗り降りする人が少なかった。医研の前を通り過ぎたところで、元同僚がLINEのお友達に入っていることを思い出した。早急に整理しよう。通りにはセント・ジェームスショコラティエ・エリカ、可愛く丸い点で区切られた名のお店が並ぶ。ラ・ボエムに入った。このお店の中世ヨーロッパを模した建物が好き。階段、チェッカー模様の床、シャンデリア。寒い時は薄暗くて賑やかなお店についつい引き寄せられてしまう。オリジナルのレモンチェッロが美味しい。飲んだら身体がキッと熱くなった。

BIOTOPPATOUのシャツと再び目があった。もっと彫りが深い顔立ちか、骨太でないと似合わなそうだ。シャルロットシェネのピアスがとても可愛かった。しかしこの値段だったらもう少し頑張ってナチュラルなダイヤを買いたいと思えてきて、結局脱線して観葉植物を買った。しゃきんと伸びたノンリーフ。モードな佇まいで良い。無駄な幅を取らないし、ホッコリ系にも南国風にもならない。家の他の観葉たちの邪魔をしない。オーガスタは好きだけど広い部屋に置かないとトロピカルさが過剰になるから難しいと思っていた。ノンリーフであれ、暖かくなると極楽鳥の花が咲くらしい。肥料の匙加減に気をつけて育てよう。他にはインポートの壁掛けの花瓶を3つ買った。石ころに穴が空いたようなカタチ。1つは素地。残りの2つはネイビーの釉薬がグラデーションになっている。新年度から仕事をセーブするから、もっと家の中をすてきにする。お気に入りの観葉植物のお店を森星さんが紹介してしまってちょぴっと落ち込んでいたから嬉しかった。

白金散歩のあとは好きなジュエリーデザイナーさんのアトリエを予約しようと思っていたけど、気が向かなくて辞めた。その代わりに緑色のヴィンテージガラスのイヤリングを買った。直径3cmくらいのつるんとした大きなカボション。大袈裟なサイズ感が可愛い。ウネウネさせたヘアに合わせる予定。


「求めよ、さらば与えられん」マスムラさんは言った。そしてうふふと笑った。「本当は会社が無くなるって聞いたとき、ショックだったの。あなたにまた会いたいって、妹と話していたの。願いが通じたのね」

マスムラさんは車椅子で生活している。家の中にエレベーターこそあるものの、一歩外へ出るとまわりは悪路なため1人で外出することができない。彼女は新しく買った黒のバーキンをベッドサイドに置いていた。金具がガンメタリックで格好良い。無駄だと言う人もいるらしい。しっとりと肉厚でなめらかな皮革が美しかった。私はバーキンの側面の革が柔らかいヒダを打つのがとても好きだ。価値なんて自分の中だけで良い。大勢の人がなんと言おうと。

『求めよ、さらば与えられん』富裕層向けの仕事でよく耳にする。信仰とは無関係に。私が松濤生まれだったら何を求めただろう。変態に金を持たせたら危なそうだ。私は庶民に生まれて良かった。

夫がフィービー時代のセリーヌのピアスを買ってくれた。アクセサリーもフィービーがデザインしていたかは知らない。あの時代のやつ。ノットデザインよりコンサバしていない、重なり合う線が知恵の輪ような、遊具のような。コンテンポラリーなシルエットが可愛い。どれだけ眺めていても可愛くて仕方がない。発売当時欲しかったけれど買えなくて、ずっと中古を探していた代物。何年も探しているアイテムが多すぎて笑う。つくづく趣味が変わらない。フリマアプリなんかで系統が変わったので売ります。とよく目にする。それを真に受けると柔軟で羨ましいと思う。注入されたものを養分として育った。三つ子のプチバトー百まで。ミヤケは百まで踊り忘れず。ヨーガンレールのバーゲンセール。

探していたピアスの発売当時は研修や勉強にお金を注ぎ込んでいたため、資金を捻出できなかった。別にそのことを夫に話ていないのに寄ってきた。『求めよ』というヤツか。因果関係?星の廻り?否定したい。カルトにハマる人はIQが低いという論文を読んだ。それを鵜呑み済なのに。

スピ信を散々馬鹿にしつつ、自分がみずがめ座なことは好きだ。変人博愛芸術家。12年に一度のみずがめ座イヤーだの言われているが、実はあと200年くらいはみずがめ座の時代らしい。結構気分が良い。最近生きるのがダルいと感じることがちょくちょくあるので今年はご機嫌直しにタロットでも習おうかな。