青色信号

雑念

密教

ここ3年で6回入院をしている。

いま病床。そしてもうじき家に戻る。

 

6回の入院の間に色んなことが起きた。

1回目の入院当日にウクライナで戦争がはじまった。今も終わっていない。

寝たきりのその1年は鎌倉殿の面白さに随分と救われた。

金カムの連載も終わった。進撃の巨人のアニメは最終回を迎え、その時私は物理的に心臓を捧げていた。

異国日記が完結した。愛の形ってたくさんあるよね。最終回は気づいたら涙が溢れていた。宝石の国も完結した。救いがどういう顔をしているかって自分では分からないモンだと思った。かわいいかわいいかわいいユマは就職をした。そしてはじめてのボーイフレンドができた。

かねがね祈念していたフィービー・ファイロが立ち上がったけれど日本では店舗がない。輸入してでも欲しい程琴線に触れる品はない。悲しい。

フィービー代!と貯めていたお金は身体的な不便を解消するためのアレコレでさらりと消えた。

 

ちょっとかしこまる時は相変わらず手持ちのトッズとマルベリーとフェラガモとかねまつで満足している。

母親業と三宅さんの相性は良く、悲しいかな私の母と同じような母が製造された。ここまでは想定内。

しかし公園はプリーツ母たちでひしめいている。某ファーストファストファッション屋さんがプリーツのパンツを発売したのだ。想定外。本物にしかない切り替えやステッチの入り方は麗しいのだけど、砂埃にまみれてそれどころではない。格好なんてどうだって良い。セックスと同じみたいで苦手だ。身繕いしてくるものの空間に入れば体裁なんて気にしたほうが負けで、感覚に身を任せる者のほうが多くの悦びを得られる。

近くの公園にはスマホ片手に放っている親はおらず、あけすけにブランドロゴを掲げる親もいない。子供はあからさまにファミリアのTシャツでミキハウスの靴だ。チ。だ。ほら。嫌だね。

多様性を認めるってある程度自分の嫌いなものも許容する覚悟のことなのにね。私はこんな時は助かりたいと思ってしまうのだ。いや、全員が我が子を方舟に乗せたいと思っている。

 

退院した時は色んな友達にかまってもらった。今思えばよく体が動いたと思う。

適当に後退りしながらモネの景観に浸ったし、サンローラン展ではスラックスのシルエットやきらめく刺繍にうっとりした。マティスの模擬教会では新しい祈りの体験をした。マヤ・アステカ文明展では石の太陽暦に感動したしバスケの代表戦は生冨永くんがアツかった。雄太さんが日本に戻ってくるらしく、夫と泣いた。アジアンヘイト入ってません?私の考えすぎ?

ご時世的に複雑ではあるけど東京ジャーミィにチューリップを見に行った。美しい建物で他の宗教施設にはない独特の開放感があるので行ったことがない人にはおすすめ。もちろん時間とマナーに気をつけて。友達は写真を撮るタイプではなく、居心地が良かった。

再び祈りについて調べるタイミングなのかもしれない。

冨樫展に行けなかったことだけが最大の悔い。これをぽちぽち書きながら冨樫の息災を確認し、ホッとする。まだ生きなくちゃ。

 

この前駅で身綺麗とはいえない出立ちの、杖をついた老女が明らかに目を泳がせていた。何かお困りごとですかと声をかけると、友達に強引に食事に誘われて来たはいいけれど行きのタクシー代が想定より高くついてしまった。ならば駅から帰りなよと友達が送ってくれたが、どの電車に乗れば帰れるのか分からない。と言う。

途中まで一緒ですのでお付き合いしますよ。と言って肩を貸した。震えて歩く彼女の足はなかなか上がらない。舌打ちが聞こえる。か弱い人にさらに冷たくできる人の群れがなによりも辛かった。休日のおやつ時、一般的には勤労に間に合わせるタイミングではない。女性はなんとか座席に座り、帰り道、今日の誘いを断っておけば良かったって何度も思っていた。誰に話しかけても無視された。でもお姉さんのような尊い方と会えて今日はラッキーだね。お姉さん、ありがとう。と言ってそっと両手を合わせた。何が正解か自分の中で分からずに彼女が降りる駅がきた。彼女と別れた後の不思議な感覚は日頃私がカルトwと草を生やしそうなもので、しかし何故か分からないけどあれは神様が人の形を借りて現れていたような。なにかよく分からない明るくて強くて光のようなものを感じた。もののけ姫に出てくる獅子神様みたいな。何か浮世離れした。あれは何だったのだろう。

 

私は厚かましいのだ。自分は脆弱だと知っているから。

誰が見ても結婚向きな性格では無いのでたびたび聞かれては説明に苦慮していた。

 

寿命の早い段階で健康を損なうことが分かっていたのかもしれない。そうとしか言えない。これが本能ってやつなんだろうか。

 

寄生獣、だ。やっぱりそうだ。そして悪魔くんなのだ。

 

どうしてこうも生きることに対して傲慢なのだろう。

損したような気分でいることが多い。

 

この気分にはシンプルな悲しみではなく、怒りと絶望が混ざっている。

 

身体が壊れる度に大切な知識が消える。これを失ったら私は何になれば良いのだ。食い扶持、アイデンティティ、失うことを受け入れられる程達観してはいない。

 

いい夢だったと思う。学びを突き詰めてもご飯を食べられる訳ではない。沢山の人が闘っている。その中では身分無相応な幸運が多かった。

 

すぐに忘れる身体になってしまったので何か伝えておくことがあるとしたらポーラのコンシーラーが素晴らしいということ。

unmixのアイブロウが便利で質感もきれいということ。

結局アイシャドウベースはNARS一択だということ。

osajiのフィックスミストは癒しの効果が高いということ。

iauの潤うタイプのシャンプーは甘くも青くも酸っぱくもわざとくさくもなくていー香り。

プラネテスを皆んなに読んで欲しい。4巻で終わるから。

寄生獣も良いよ。

君を死なせないための物語も面白かったよ。

あとはええっとアフターゴッドが楽しみ。

 

あと子供、赤ちゃんぱんだが子供のぱんだになってとても素晴らしい。星のまたたき、蝶のはばたき、人のまばたき。1秒にも満たない瞬間に美しさが詰まっている。

 

ただ、産まない選択をして生きることは間違っていないとも思う。人にオススメはできない。

私は過ちを犯した。そして彼は誤った存在ではない。どちらも美しい生き物であることに変わりない。

 

君たちはどう生きるかを映画館で見れたのもラッキーだったな。意思、石。たとえどんなに醜い世界でも尊厳を持って意思を積み重ねて行きたいよね。

 

次々に襲いくる病に打ちひしがれていた矢先、宇多田ヒカルのチケットが当たった。まだやれるってことですね。ヒカルはユーミンと同じ誕生日なんだよね。山羊座の女って志ありがち。信頼できがち。樹木希林さんしかり。私の大好きな友達も山羊座が多い。

 

東京の会場で会いましょう。