青色信号

雑念

血継限界とか真血とか

子供の頃は家族の服装が嫌いだった。どうしてそんなにシワシワや折り目のある生地なのか。体のシルエットと違うヘンテコなカタチなのか。所々がゴムになっているブーツも変だと思っていた。しかし、お店の人が必ずお菓子をくれるので毎度ついて行った。中でもフロランタンと、オールスパイスのクッキーが大好きだった。小学生になって値札が分かるようになると、なんで仕事の関係者でもないお店の人たちが親を「先生、先生」なんて呼んで高い声を出すのかが分かった。ウワワッと広がるスカートに12万円の値段がついていた。バブルなんてとっくに弾けているのに。


母は優しいので授業参観にはネイビーのツイードのセットアップで来てくれた。けれど、ボタンがチャイナボタンになっていた。やはりどこか違った格好だった。その格好は可愛いと思った。


中学生の頃は老け顔すぎて似合わないためSEVENTEENはあんまり読まなかった。ませくってCanCamを読んでいた。徳澤直子さん派。レモンイエローのツインニットを着て、かごバッグにスカーフを結んで完全に赤文字系の格好をしていた。

転機は兄のバンド仲間がPerfumeにハマり、私も影響されたことにある。当時マイナーであったが日本のバンド界隈にはPerfumeのファンを公言している人たちが一定数いた。何故かクラブ系の元々テクノが好きな勢ではなく、バンドマンが。セラミックガールとパーフェクトスターパーフェクトスタイルとスーパージェットシューズのカバーが好きだった。Perfumeの衣装が市販品だったので、その事実を知るなり、真似するようになった。

CARVENを選ぶようになると、親はとても似合っていると褒めてくれて嬉しかった。


それから時は経ち自分のお金でSeebyChloeやらmameやらIreneを買うようになった。大げさな襟や袖のディティールやモダンなプリントに惹かれた。何より、Perfumeになれたようで嬉しかった。


何故Perfumeが好きかというと、彼女たちは巫女だからだ。あえて人間らしい感情表現はせず、ただ世界観を伝えるのみというのが異質に感じられた。完全に中二病ホイホイ。中二の私には彼女たちのシンクロしたパフォーマンスは見えない何かを呼ぶように、召喚しているように感じられた。当時流行っていたエロ可愛い私が会いたくて震えて君に出会えてよかったとfeat.していた歌詞に共感できなかった。留学(トラウマ)により洋楽もあまり聞かなくなり、さらにのめり込んで行った。歌詞やメロディや歌声が好きなアーティストは他に沢山いるが、Perfumeは「好きな歌手」のジャンルではなく「好きな巫女」。「好きな寺社仏閣および寺院教会」と同ジャンル。


最近買ったものの記録。バロックパールのネックレス。シンプルな格好の時に合わせる用。日本橋をうろうろしてANAYIで買った。中学からの友人がANAYIはパールの卸と契約しているからオリジナルのパールアクセは割安だと教えてくれたのを思い出した。本当かしらん。照りはそんなに良くないけど確かに割安だったから気にしない。保守すぎたら意味が無いから淡水でじゅうぶん。夏にARROWSで買い損ねた恨み、セレクトのやつだと知らずまんまと買い逃したつらみを晴らした。友人のママの参観日コーデは私の憧れだったことを思い出す。リボンタイ、フレアスカート。ベージュのパンプス。フェミニンでエレガント。あれはANAYIだったのか。

銀座三越でロンシャンのカスタムオーダーイベントをやっていた。MARNIのデッカい子は役に立っているが、重いからなーと思っていた。断捨離で旅行バッグを捨てたばかりだったのでオーダーしようと思ったら、旅行サイズのやつはキャンバス地オンリーだった。キャンバス地は服を擦るから嫌い。おまけに顔にも似合わないから却下。通勤用にナイロンのA4サイズで作ろうかな。一面にでっかくお馬さんの刺繍を入れたら可愛いかなぁと思ったが、通勤鞄にそんなにお金をかける気がしなくてやめた。A4サイズの何かを持ち運びたい時はmeのプリーツバッグか夏に買ったプチバトーのトートで良い。


ふと気づく。はぁ。なんてこった。結局私はmameを着ている。mameはミヤケさんとこ出身の人のやつだ。私の親族はなぜか一同にミヤケさんと呼ぶので習慣づいてしまった。この癖も直したかったのに。まんまとmeの胸元のカットが妙に似合うニットを着ている。meのサブバッグを持っている。最近1番褒められた靴は母のお下がりのPlantationとヨーガンレールのもの。どちらもフラット。


あんなに嫌だったのに結局実家の人の好むものを選んでしまっている。これが血が騒ぐってやつなのか。教えて下さいジャンプの主人公たち。


新しい職場ではスクラブを着ない。制服だと常にポケットがあったけれど、私服生活はポケットの無い服のときに困る。お手洗いも使い捨てのペーパータオルが無い。初体験なため驚いた。来月旅行にも行くことだし、常に下げていてもおかしくない小さなショルダーバッグを探した。LOEWEのやつは可愛いけど飽きる予感満点。ATPは可愛いけど割高。結果the dilettanteのミニショルダーを買った。無駄な存在感は無いけれどさり気なくアシンメトリーなつくりが可愛い。スマホとハンカチとメモ帳が入るサイズが丁度いい。この間買ったパールネックレスと合わせてもATPのやつ1個分。かなり良い買い物をした。


あと今月はSUQQUのチークの予約をする。CHANELの新発売の艶が残るけどマスクに付きづらいらしいリップも買う。そして愛弓さんのHIROSAIが楽しみ。最近のパキッとした色出しの国内ブランドでは、イウエンマトフが気になっていた。しかしサイズ感が合わず試着室で泣くことが多かった。HIROSAIはどうなのかなぁー。ECは怖い。

スマイル

「なんとなぁく分かってきたと思うけど、この仕事って誰にでも出来るものじゃないのよ。モノノベさんにはずっと居て欲しいんだけどなぁ、私から推薦して昇進とかもお願いできるんだけど」新職場の上司は昔むかし保育士をしていたそうで、何かにつけて「よく出来たねぇ~~っ」と褒めてくれる。のぼせそうになるのできっと今だけだと言い聞かせている。彼女は目が合うといつもニッと笑う。私を好ましく思っての笑顔なのか、自分の思い通りに物事を運ぶ手段としての笑顔なのか。

ヒトは生まれながらに社会的生き物だ。新生児微笑というものがある。新生児の頃、親に育児放棄をさせないために笑顔を振りまく期間が存在する。笑顔は己の生存のための機能として備わっている。情けは人のためならず。


やっぱり私は『神経の細い子』だ。いくら分析して俯瞰で見ようと思っても、この世の全てのスマイルがただの快刺激としての笑顔であって欲しいと願う。どこかで期待している。幼稚だ。チャーンもバァブゥーも言えないレベル。イクラちゃん以下。陶子じゃなくて筋子。今旬の。『神経の細い筋子』なんか強そう。『涼宮ハルヒの憂鬱』カラオケの履歴にありそう。『とある魔術の禁書目録』誰かの黒歴史作ってそう。(全く内容知らんけど)

というかわざわざ分析すること自体が『細い』のだろう。ヒトはオバサンやオジサンになると図太くなるらしいから、まだ青いってことなんだろう。オバサンを即座に通り越してサクッと『おばぁちゃん』になれるよう日々努力をしたいところ。


昼休みにコートが入荷したので、と電話があった。銀座三越のENFOLDへ寄った。今年のノーカラー コートはでっかいボタンが付いていて、遊び心のある仕上がり。カジュアルすぎて私の顔には似合わなかった。私が着るとnagonどころかZUCCAに見える。ZUCCAは元からシュッとしている顔とオーラの人が着るもの。ずっとセレショにもELLEshopにも取扱があったのに殆ど目を引かなったmizuiroindを今季はモトーラさんに着せていて、はじめてホウホウと認知した。そのような『パッとする』バランス感って大切。元の素材がユルめの私はもーちょいコンサバで締めないと駄目。てかZUCCA、UN3Dに寄ってきてない?もっとホッコリしてなかった?え?


ピンと来ない私の表情を見るなり、力ちゃん似の刈り上げショートが似合う店員さんが黒のチェスターを持ってきてくれた。ビッグシルエットはなぁ……苦手なんだよ。と思いながら着ると、マァ綺麗だった。例年のものと違い、今年のものは襟幅が狭い。アームホールも細い。もちろん袖は折り返しができる。肩周りのみゆとりが有り、ドロップになっているので中の服が面白みに欠く時は背抜きにもできる。後ろ身頃はセンターシームが入っているので着膨れ感が出ない。何より裾の収まりのタイトさが他にない美しさだ。黒のコートは無骨な印象になるので敬遠していたが、リバーの柔らかな素材感と腰から下の先細りになるシルエットが重さや無駄な存在感を打ち消してくれていた。


ビッグチェスターって何。私が着ると後ろ姿はまるでノートルダムの鐘つき男。あんまり良い例え方ではない。チェスター着るならコンサバブランドでジャストサイズを探す。と思いながら数年。コンサバブランドで試着しては、うわこれ私が着るとただの地味な人。これにお金をかけるのか。と思いながら数年。当時夫に意見を求めたが「そもそもね、ロングチェスターって難しいアウターだと思うよ。街中で着てる女の子も男も多いけど、身長とか骨格とかにかなり左右されるから、俺的に着こなせてる人あんま見かけない」「陶子さん、ホラ、骨格がテテンとしてるから」とのコメントだった。夫はわりと寛容だし言葉遣いもきれいなタイプではあるが服装に関してはズバリと辛め。大学生の頃某誌の読モをしていた彼は未だに展示会への招待で服を買う。未だに学生時代に買ったコートを着こなしている。ミーハーで芯のない私には真似出来ない所業。凄いなと思っている。

チェスターコートは買わないと思っていたが思わぬ所から見つかった。適度に遊べるチェスター。ネットのモデルやトルソー画像では無感想だったので大穴だった。アウターは顔立ちとの相性が大きい。やっぱり服は試着しないとダメだなと痛感した。今までENFOLDのコートは良いねと言って貰えてきたから、今年も褒めてもらいたい。綺麗だねと言われたい。


この数年、異常気象で東京は暖冬だったそうだ。初めての本当の冬が来る。備えあれば憂い無し。寒くても笑うために色んな準備をする。

ここは銀座

定期で行ける範囲が広がった。自分が色々偉いから褒美を買おうと定時ピッピした。エレベーターの中でお気に入りの帽子を頭にポンとのせた。出勤時は被っていなかった黒のトーク帽。レザーのベレーを買おうとした時期があったけど辞めてよかった。一歩間違うと田舎の女子大生みたいになる。それに来年にはダサくなっていそう。私みたいな平和な顔の人間はウールフェルトが似合う。クタッとした素材はだらしくなく見えるからトーク帽くらいカチリとしていたほうが賢くみえて可愛い。いつだったかツイードのキャップを被った時に爆笑をお見舞いしてくれた夫も珍しく褒めてくれたので気に入っている。他の友達にも沢山褒めてもらった。自分的に可愛い格好でESTNATIONに向かった。


引いた。一階がアウトレットになっていた。商品数が少なくガランとしていた。ジーナピョウのボタンが可愛いピンクのジャケットが40%off。特に欲しくはなかった。二階に行ったがニットもブーツもこれといって欲しいものは無かった。コスメコーナーに最近LOVEなビュリーのハンドクリームが置いてあり、パケがめちゃくちゃ可愛かった。仕事中元気が出そう。買おうかと思ったが、特段良い香りでもなくあまりにもコッテリして馴染みが悪かったので辞めた。乾燥が酷い人には好評らしい。私の知っているESTNATIONと違っていた。もうあまり行くことはないかもしれない。じゃあESTNATIONはどこにあるんだろう。新宿店より銀座店が好きだったんだけどな。

そのまま向かいのLOFTへ行った。銀座店は他店で扱いの少ないコスメが置いてある所が好きだ。アルテヤオーガニックのローズウォーターを買った。薔薇の香りのコスメを嗅いで、毎度「こんなの薔薇の香りじゃない」と言う私が「これは薔薇の香り」とジャッジした珍しい品。保湿力は特に無い。ただ香りがスーッと入る。この香りだけでホルモンバランスが整って全ての肌荒れが治りそうな気になる。それくらい心を揺さぶる。十分な効果だ。オーガニックコスメにありがちな「本心では凄く好きって訳じゃないけどこれを好きって言ったらお洒落と思われそうな柑橘やラベンダーの香り」とは違う。そもそも皮膚は排泄器官だから化粧品で解決しようとしても、、ねえ派。だから化粧水は別にコッテリしていなくて良い。ハイうざい。私は鬱陶しい。

OSAJIも置いてあった。萎んでいたテンションが上向いた。ディレクションしているAYANAさんのファンだ。彼女の書く文章が好きだ。美容雑誌や美容垢について、実際の若者ではそんなに使用されていない若者言葉を大げさに載せたり、一体誰視点なのか謎な表現が多いと感じている。共感しづらいのでたくさん飲めない。ここしばらくの情報収集は信頼できる友達かファッション誌かBEAUTYdept。それくらいの量で十分だ。実は以前からOSAJIのスキンバリアBBを愛用していて、それ以来輪をかけてAYANAさんを信頼している。私はシリコンやポリマーで荒れるのでケミカルファンデほぼ駄目だ。かといってオーガニック系はヨレやすかったりむかしの日焼け止めみたいな色具合だったり経時的にくすんできたりなどして苦手だ。しかし、OSAJIの BBは良い。某スメキッチンのバズりクッションや韓国コスメのアレや某皮膚科のカラーバームより。ピッと薄ーく密着する。何かが突出してはいないが、素肌っぽく、汚くならず、荒れず、全てが丁度良い。個人的に期待値が低かったので凄く喜んでいるが、太鼓判を押されていたとしたら「それ程でも?」となりそう。なので友達には話していない。ハンドクリームも良さげだった。値段も1000円。今度伊勢丹の通販で買おうと思う。


お昼はサラダだけだったので、アップルパイでも食べようかと思って東急プラザに寄った。リバティのビッグトートが可愛かったからまた見たいなぁと思ったら、輸入のセレクトショップは軒並み撤退していた。よく分からないアウトレットの服や集英社ハッピープラスストアの実店舗になっていた。国産のデザイナーズジュエリーのセレクトショップも無くなっていた。辛すぎる。ショックでヴェルメイユを覗き忘れた。グラニースミスは思ったより客が多かった。結局根室花まるで程々に良いネタをチョコっと食べた。根室花まるはそれなりに美味しくて好きだ。トリトンは本当にダメなんだけど食べログの点数があんまり変わらないのが不思議でならない。今度は金沢のところに行ってみたい。もう私の好きな銀座は無いのか。もう戻って来ないのか。ここだけは富裕層が守ってくれると思っていた。一体何をしているんだ。そりゃ東急プラザの中なんて本丸じゃないけど、余裕のあるヒトの余裕で守ってくれると思っていた。そもそも日本には富裕層など居なかったのか。Covid-19に対して、久しぶりに恨めしく感じた。元々客入りの悪かったSIXはどうなったんだろう。私の好きなジャンフランソワはまだ生きてるのか。お正月はジャンフランソワのガレットデロワじゃないと嫌だ。それかマンマーノ。ブルディガラのじゃダメなのに。悲しい。また月曜日銀座に偵察に行く。

水泳は見学します

この若さで職歴の多いこと。結婚で正統なキャリアから逸脱した。というか諦めざるを得なかった。自己都合退職ではないことに出来るので飽きっぽい私には結構便利だ。今月、ド臨床から技術へ転職した。

好き勝手に泳いでいた。乗り込んだ夫のゴンドラは私が操縦する必要が無かった。ついには揺られているだけの無刺激に病みそうになり、絶対に戻れる距離にいると約束をして、周りをバチャバチャしていた。むかし船に乗っていた時は下が目に入るなり、あの泳ぎ方はフォームがダサいだの推進効率が悪いだのと思っていた。どこかの島へ着いたら特別な人間としての価値が与えられ、幸せなれると信じていた。そのために常に急いでいた。はやく船を操縦できるように、スピードが出せるようになりたかった。しかし今は、泳いでいる人のことが分かる。泳ぐ者にしか味わえない浮遊感、しょっぱい味、水深に広がる景色の残酷さと美しさ。目的地に何があるか分からない、着く頃にはどうなっているか分からないのに速く泳ぐことに価値は無い。そう気づいた。だからもう泳ぎに飽きたとしても船には乗らない。今は自分の感覚刺激のほうが大切。例え犬かきであろうと。


なんだか成長したワタシ☆っぽく書いているが若年者の脳は学習効果を急がせるために、より不安を強く感じるようにできている。不安定に不安感を感じなくなるというのは、ただの加齢変化だ。人間もただの動物だ。それだけの話。はやく魚になりたい。


夏に協会から会報誌が届いていた。covid-19の影響で学会や細々としたライセンスの研修がオンラインになったと書いてあった。中には私の目指していたものも含まれていた。夫に概要を見せると「割に合わないね」との一言だった。確かにそうだ。好きに泳げる今は価値が見出せなかった。


技術の職場は途絶に業務量が多い。これでもcovid-19の影響で十数個減ったというのが驚きだ。所属部署の役職者が過労で2名ほど休職中だ。でしょうね。としか思わない。もともとは電カの入力ばかりだったので、10年ぶりにOutlookを使った。庶務課への返信の文字を青色で送ってしまった。オフィスワーカーの方々はまじで引くだろうな。


所属課のメンバーは穏やかで頭の回転の速い人たちだ。ホモサピ上級者。相手の気持ちを考えて、積極的に感謝の言葉を伝える。和むようなお茶目な発言をする。気を利かせて仲間の作業をフォローする。神はディティールに宿る。ニュアンスで空気はできる。それらは人を支配する。1週間勤めての感想は「平和」だ。マトモな人と接するのが久々な私は、幸せすぎて怖い。この平和をなかなか信用できないでいる。上級者たちなだけに裏でとんでもない冷戦が繰り広げられたりしていそうで怖い。迷い犬のように入職したが、冷静に考えれば新卒で入った病院よりもかなり難関な場所だ。厳しいふるいにかけられてきた人たちだ。きっと素養というやつだ。今までの誰でもOKな場所とは違う。信じるんだモノノベ。


ここに来て新しく大きなことを知ってしまった。私がずっと海だと思っていた物は実は水槽だったのだ。自分で泳げる力を身につけた私は良くやった、なんて思っていたら、その全ては枠組みの中の話だった。海だと感じているみんなは、現在進行形でその事実を認識していない。なんか怖い図式だ。

とりあえず1週間はプールサイドから見学する。なんとなく取っておいた夏の会報誌を再びめくると、水槽の監督業務に従事している者は全体の0.4%らしい。なるほど就活時に必死で内情をリサーチしても情報が見つからなかった訳だ。納得。


船の舵取りはコントロールが大変だった。自分の体で泳いでいる時は好きにできて良いなと思っていた。今度の監督業は座っているだけだ。体力が減らない。凄い。

業務内容は向いているようで褒められてばかりで大変楽しい。この出会いたちが良縁とやらだと良い。もちろん選んで行動してきたのは自分だけど。迷い犬が重宝されることもあるんだな。犬かきもやってみるもんだな。なんて思った。おばちゃん臭い。またひとつ加齢変化したってことだ。銀座へお祝いを買いに行こう。

縁切り

GODIVAは選ばない。その価格帯ならLeonidasにする。赤坂見附のそういう所が好きだ。どうやら私はLeonidasと縁があるようだ。地元にいた頃も家の近所にあった。狙った訳では無いがこっちに引っ越してきてからも家の近所にある。都内のLeonidasのある所は大体私の好きな土地だ。

人はまいるとまいるのだ。豊川稲荷の分院に行った。TOKYOでは縁切りで有名な神社。私の目的もそうだ。七福神、お地蔵さま、神社内のすべての神さまへお賽銭を奉納した。狐さまのところには絵馬までも。いつもゆるゆるでバチあたりな私にしては珍しい行動だ。


なぜ参っていたかというと、ハラスメントを受けていたからだ。労基違反。もちろん入職時から分かっていた。職場は自宅から徒歩5分。休憩時間に家に帰れるからまぁヨシ、と判断したのは私だ。10月で潰れる職場を9月末日をもって退職した。早期退職だ。ほんとうは早期もクソもない。職場が閉業するのだから雇用保険加入のない私が経済的にシームレスな移行をするのは当たり前だ。自己都合退職ではないから「疲れたし、一旦仕事辞めてゆっくり休んで~」なんてノリでは無いのだ。


嫌だったのは無論専務とその親族の従業員である。専務は私くらい背が低く、小太りでギョロっとした目つき、いつも額に脂汗が浮いている男だった。色々無理。専務のパパはやり手の社長だった。専務はパパのコネの中でしか生きたことが無い。コンプレックスの塊で、他人が賢いという事実が気に入らないのだ。

私が早期退職を伝えた時、私のセリフが終わる前に「ぁーーーいいよいいよいいよ!ウンウン!ぜーんぜん!」と捲し立てた。YESを表明しさえすれば優しくて理解のある経営者を演じきれていると思っているのか。間合い、ディテール、含ませ、すべて下手。つくづく下品だった。捲し立てるスピードに苛立ちと焦りがハッキリと見えて気持ちが悪かった。ついでに専務の親族の従業員(母親くらいの年齢の女性)も私への嫌味を繰り出してきた。お耳をドーナツにしていたので内容はあんまり覚えていないが「若いのに自分を大層な人間であると思うな。私の若い頃の苦労がドーチャラ、この仕事は経験がコーチャラ、昔医師会に勤めていた時はナンタラ」という話だった。はて。持っている免許資格が違う。医師会に勤めていたといっても彼女はたぶん事務の手伝いだろう。職域は聖域というのが臨床家のルールだ。他職種へのリスペクトが何よりも大事だ。いくら私が年下であろうと、平気で域を超えた発言ができる時点で、大した仕事を経験していないことが分かる。ようは私が若くして免許を取って週4しか働かないで暮らせているのが気に入らないということだった。馬鹿みたいだ。「いつも自分のこと凄いみたいに話すけど、誰もアナタに興味ないのよ」と言われた。『凄い』とは。私はその人に興味を持ったことが無いので何かを聞いた事は無いし、向こうに聞かれたことしか答えていない。大して会話をした覚えが無いので流石に驚いた。流石は専務の親族だ。血は争えん。自我が幼く相対評価で他人をみる。専務御一族には現場と関係が無いので興味を持たなかった。そして大した注意を払ってこなかった。ダルーーーーー。

現場の人間関係のトラップには注意していたので円の満。お姉さん方や後輩らとはまたプライベートで遊ぶ約束をしてニコニコと別れた。マタナーーーーー。


他にもひとつ、縁切りを願った理由がある。それは顧客たちからの念だ。私を助けてくれなかった、私を裏切った等という強烈な念が飛んでくるのを感じた。飛ばさないでいただきたい。雇用を保証しないで私を雇うという経営方針にのっとっただけなのだから専務へ飛ばしていただきたい。


いくら差別だと言われようとしばらくは北関東出身者とは関わりたく無い確かなmy heart。打率が良すぎる。10割が好ましくない人間だった。オールじゃないか。絶対良い人だって居るはずなのに。北関東出身者不信病だ。結構ゴロが良い。


どうか下品な人々と縁が切れますように、これからは良い縁に恵まれますように、と狐さまへお願いした。夫婦で凶のおみくじを引いたので身代わり地蔵さまに代打指名しておいた。帰りに表参道のCIBONEと青山のフリッツ・ハンセンに寄ってエルメでお茶をした。せっかく夫が甘やかしてくれたが、客層が好ましく無かったので青山店はたぶん二度と行かない。夫はデセールについて「チョコが重くて甘すぎる。ケーキをテイクアウトしたほうが良かった。チョコが恋しいお口ならLeonidasで十分だったね。」と言っていた。私も同感だった。次の職場では良い縁に恵まれますように。帰ったらLeonidasにも参拝しておこう。

主演女優

「このお花、なんていうの」「芍薬だよ。陶子ちゃんみたいに綺麗でしょう。あなたに喜んでもらうために育てたんだよ」


母方の祖母には大変甘やかされて育った。私の為にと庭をつくり、果物や花を栽培していた。烏骨鶏や蜂の巣箱まで飼っていた。祖母の家で採れる桃やキウイやさくらんぼが大好きだった。今年も例年通り敬老の日に祖父母宅へお菓子を送った。すぐに丁寧なお礼の電話が来た。不愉快だった。違う、悲しかった。久しぶりに呪いの味がした。


祖母は写真が大嫌いだ。理由は自分の容姿が醜いからだそうだ。祖母は働いたことが無い。祖母の生まれた家は裕福でなかったからだ。祖母が女学校を出るタイミングで祖父の家から縁談が来た。内心嫌だったが、自分の親兄弟のために断れなかったそうだ。というのも事実であるが、祖父の器量の良さの影響も大きかったようだ。良い男に毎日お嫁さんに来てくれませんかと訪ねて来られ、こんなブスがハンサムな男に口説かれる機会は2度と無いから幸運かもしれないと思ったそうだ。祖父の家は地元の良いお家で、最悪なことに末っ子長男だった。結婚後は義母や義姉から馬鹿にされ、こき使われ、聞く限りでは嫁という名の奴隷だった。祖母は奴隷根性が染みついている。祖母には小さな頃から「人より良い物を持ってはいけない。人より目立ってはいけない。そんなモノは絶対嫌われるから。犬みたいにニコニコして言うこと聞いていたら可愛いがられるんだから」と繰り返し聞かされていた。子供ながらに祖母の願いを叶えてやれないことを分かっていたから、祖母に対しどこか心の距離を置いていた。嫌ですと断っても、役割決めの日に仮病で欠席しても、お遊戯会の主役や大会の選手宣誓や卒業式の目立つセリフの役は私になってしまう。私はどんなに目立たなくしようとしても出る杭なのだ。異形。子供の頃、というか大集団での生活が必要な頃はそんな自分が嫌いだった。24歳くらいになって自他の境界に折り合いが付き、やっとそういう星のものとに生まれたのだと諦めることが出来た。自分の中では随分長く時間のかかった課題だった。私の生育歴が世間的にきらきらお星さまに見えようと私にとっては大方が他人に踏まれたガラス片だ。もちろんそれなりに価値は感じているが。


私には未婚のおばが数名いる。母の姉と妹は2人とも祖母宅で暮らしている。祖母は自分のトラウマからどんな所に嫁がせるかということに過干渉になり、私の母以外の娘を手元に置いた。呪いの伝播だ。恐ろしい。敬老の日の後電話口で「陶子ちゃん、おばあちゃん、また背骨がひとつ潰れちゃったのよ。アナタのお母さんが歳を取っておばあちゃんと同じようになったらどうするの。そんなに遠くにお嫁に行って」と言われた。私を芍薬のようだと褒めるのと同じ声。不自由な時代で他人様の顔色と子供を操作することでしかアイデンティティを形成できなかった女性だ。己の欲は無く、ケア労働と子育てができることが『優れた女』だとされた時代。本当は謝って欲しいのだろうが言えなかった。一通り身体の心配の言葉かけをした後「母さんが歳を取ったらその時は私の家に住まわせるから別に問題無いよ。車が無くても不便はしない場所の方が楽しく暮らせるよ」と答えた。もちろん祖母は死んだ他人様のことまで引っ張り出してきて「そんなことをしたら、お父様方のお墓はどうやってみるの。お父様方のおばあちゃまが悲しむわ」と言った。こんな時は兄に頼るに限る。「兄さんたちが地元にいるでしょ」と答えた。すまん兄。ありがと兄。そして祖母には悪いが父方の祖母は1mmも悲しんだりしないだろう。彼女は私にそっくりだ。身内に恵まれなければ歩いて必要な友達を探しに行った。自分が欲しいものは欲しいと言って手に入れてきたタイプだ。納得が行かなければ相手が祖父であろうと思いっきりケリを入れていたのを私は知っている。


祖母の抱える生きづらさへの悲しみが薄れるならば何でも言ってくれて良い。そう思っている筈なのに、私のことを理解してもらえないと感じた時には不愉快で、クドクドと説き伏せたい気持ちが湧いてしまうことがある。しかし私のこの気持ちも、期待と悲しみによるものだ。

私の頭部はナンセンスなメロンパンを搭載しているため時々味が分からなくなる。不愉快の奥に期待と悲しみの味がすることに気付かねばならない。最も大切なのは、承認と悲嘆の欲求だけでなくきちんと大きな愛情があることに気づくことだ。他人に生き方について口出しされるのと、祖母から口出しされるのは含まれる意図の味わいが全く違う。もちろん他人が押し込んできた味のおかしな食い物だったら容赦はしない。ちなみに私はこの性分によって女らしくない女だと言われる。女として優れていないというジャッジ。笑える。男女脳の神経神話を信じているとかいつの時代だ。理屈っぽいのは私という生き物のメロンパンの溝のクセが強いだけって話なのに。

人間はアンビバレンツな生き物だから言葉にタグ付けをして仕分けて、論破して済ますのは良くない。もし味が五角形の5種類しか無いんだったら生きることに5日で飽きる自信がある。同じ言葉を吐かれても、そこに潜んでいるものは違う。見聞きしただけでは絶対に味は分からない。歯ですり潰して、舌で転がしてどんな味がするのかが重要だ。表裏が混在していることをきちんと感じていないと簡単にAIに脅かされてしまう。香料で作ったニセのメロン味と本物のメロンが同じ五角形を描いていたとしても全く違うのだ。ファンタグレープはブドウの味はしないだろう。フレーバー。奥行き。含み。ニュアンスの豊かさを感じることが人間の醍醐味。そうなると不愉快だとか悲しいだとか憂いているだとかいう感情は絶対必要なのだなと思う。大切にしてやる必要はないけれど。


この1年で2回ほど似ていると言われた女優さんが亡くなった。たった2回だから殆ど似ていない。恐らく人中の長さくらいしか共通点がない。現実はどうあれ、似ていると名前を出された時はめちゃくちゃ嬉しかった。小さな頃、彼女の主演ドラマを楽しみにしていたからだ。『ランチの女王』そして、お気に入りだった『不機嫌なジーン』。小さかったからうろ覚えだが、動物の遺伝子学の研究者が主人公だったように思う。今気づいた。私が彼女に似ているのいうのは、ルックスではなくジーンの屁理屈さと不器用さなのかもしれない。そんな意味が含まれているのか。美人と褒められたと思い込んで舞い上がったのにな。恥ずかしい。チキショゥ……。祖母から呪いを受けても、彼女の演じる意思と行動力のある女性たちは小さな私を励ましてくれた。明るく大胆な演技をしていてもどこか品が良く、爽やかさのある素敵な女優さんだった。それが彼女に対するイメージだ。

精神疾患の経験や学習の機会が無い人には理解し難いかもしれないが、どれだけ朗らかに前向きに見える人であろうと、人間はいとも簡単にバランスを崩してしまう。そんなの個人の問題といえば簡単だけど、そう考えているそこのお前も人間に生まれた以上バランスを崩す可能性があるんだぞと言いたい。だから協力することが必要なのだ。みんなもっと他人への、当たり前だと飲み込んでいる事象について疑ってみるべきだと思う。理解からしか始められないのだから。ちゃんと噛んで、舌で転がして、どんな味か感じていないと食べたことにはならないのだから。咀嚼能力が無さすぎる。歯が抜け落ちてどんどん飲み込むだけになっていく衰退国家に対してそんなことボヤいても犬に論語だが。

こんなこと言って一体私は何様のつもりだろう。王様か?それなら私のキャッチコピーは『不機嫌なメロンパンの女王』にしたい。XX。ただの染色体の記号。XOXO。キスハグキスハグ。私の大好きな女優に心からの感謝を込めて、今の気持ちを書き留めておこう。

報酬の経路

王子さまへ。てんこうしていっちゃうのかなしいです。またあおうね。あやか。

モノくんはウチら女子からしたらお助けヒーローみたいな王子みたいな存在でした。夏菜

仕事の能力も人柄も最高な王子は、どこへ行っても大成功するって、私は知っています。また戻って来たら一緒に働きたいです。庄村

 

「モノノベさんの旦那さんってどんな人なの?写真見せてよぉ」職業柄、指輪をしない人も多い。結婚なんてナンセンスって言いそうな私がしているとなると気になるのも頷ける。今日もキャルンキャルンの事務員さまに聞かれた。子犬みたいで可愛い。昨日は頑張ってチャーシュー作ったらしい。こんな可愛くて明るいおかーちゃんの手作りのチャーシュー丼とか、お子さんたちは幸せマンモス肥後もっこすどすな。「普通のサラリーマンです。BLEACHみたいな骨格してます」写真を見せると「あー!白哉様なんだけどー!いや恋次くんかなァ?NANAとかにも出てきそう!」と言われる。「私があんまりマンガ読まないことが災難に思える程にマンガっぽいんですよねー、シナガワさんは好きなマンガとかありますか?最近読んでないからオススメ募集してて……」以前の職場でネタを入れ忘れてフツーに返事をしたらすぐに会社の名前スペース年齢スペース年収をググられて不愉快だったので白哉様に感謝している。これが主婦の日常会話の世界か。この事務員さんはまじで子犬なので特に支障は無いんだけど、転勤妻になって以来余計なトラップには注意している。若い頃バンギャやってそうな人って大体BLEACH読んでるよね。

 

夫の誕生日だった。欲しいものは何かたずねると、「メンズ美容関係のものが良いな」と返事がきた。Panasonicから新発売された美顔器の機能のついたシェーバーか、保湿力のある乳液などが良いらしい。伏し目がちに「スキンケア、分かんなくて」と言う。私の鼻孔が膨らむ。私はよく夫にオサレのセンスについてお小言disを賜っているから、ここぞとばかりに教えてやった。「美顔器の初期モデルは不具合起きやすいから様子見たほうがいい、きっとそのうち耐水性高いモデルとか掃除しやすいモデルとか出てくるから」「洗顔は擦っちゃダメ、水滴拭くときも。化粧水はパタパタせずにゆっくり馴染ませないと」この男は私より肌理が整っていて、どこにも毛穴が無いのに何に悩むのか。彼は私と出会うずっと前から、私より高級なヘアケア用品を使っている。アウトバストリートメントまで。なのに、嬉々として上から目線で指示する。

 

夫の話をすると、よく「女の子みたい」と言われる。デザイナーズの椅子や輸入食器が好きな男だ。初めて部屋に遊びに行ったときは某ルビジェのソファがあって驚いた。赤がアクセントになったもの。そんな激ムズなアイテムをよくぞ使ったものだ。聞くところによると、最近の主婦はデザイナーズの椅子も輸入食器も好きな人が殆どらしい。だから夫は女子力が高いらしい。出典︰シナガワ白書2020 

 

夫は実際に会った人からは王子と表現されまくる。手紙に書かれまくる。事実だからしょうがない。摩擦を生まない関係の人にはさっくり『王子様ポジション』だと説明している。凄く年上の人にはミッチー、アラサーの人にはあずきちゃんの勇之介くん。同年代の人や若者には例えに困る。杉野くんという俳優に似ているらしい。調べたが夫はあんなに可愛らしくなく、もっと冷たい目だ。長谷川博己先生にも似ているらしい。私は残念ながら二次元に詳しくないがきっと彼みたいなキャラは沢山いる。色白で塩顔で時々かける細縁のメガネが似合う。身長はまぁまぁあって細身だけど骨はシッカリなので運動部。特進クラスのアイツ。腐女子の好物を具現化したような生き物。私が仮にクラスメイトだったら夫をモデルにした作品を書いていたに違いない。きっと絵が上達していただろう。

 

私が新人のとき初めて担当した患者さんは地元の夜業界で有名なママさんだった。初めて顔を合わせるなり、「レイコちゃん(私にそっくりな嬢と間違っている)、これだけは覚えときなさいね。結婚相手の見た目は大事よ。見た目で許せることってあるのよ。絶対に伝えないといけないと思って」と力説された。頭蓋骨を一部外し、気管から声が漏れるという稀な状態で。新卒の私は聖人的な何かを目指していたので恋人を見た目で選ぶなんて愚かしい悪の所業だと思っていた。しかし彼女の必死に訴える様は凄まじく、走馬灯というものがあるとすれば確実に出てくるレベルで脳裏に焼き付いてしまった。

 

私の夫は美しい。彼に初めて出会った時、骨のバランスに衝撃を受けた。鼻筋、輪郭、首の長さ、広い肩幅、太くて左右対称で角度の少ない鎖骨、大きな手。骨が本当にお洒落だった。そのバランス感は私にとって衝撃で、今でも頭が真っ白になった感覚を鮮明に覚えている。衝撃から3日後、私はその男と婚約した。

 

最近アタマについて勉強し直している。生物学である神経科学と医学である精神医学は違う。人類学と哲学は違う。心理学もまた違う。例えば心臓については医学界隈の人しかほぼ興味を持っていないのに、様々な分野の人たちが微弱電流が流れているブヨブヨメロンパンについてだけは大きな関心を持っていて凄いなと思う。各々が全く違った角度から色んなことを述べている。ちょっと前、遺伝子学の人と女性学の人が言い合いをしていたのを見かけた。

私が専攻していない学問によると、人間の見た目は造形が整っていようといまいと価値は変わらないらしい。しかし、私の専攻した学問によると、均整の取れた物が視覚情報として入力されると、報酬系の経路が働くという。そのものの価値は等しくあろうとも、報酬の反応には有意差がある。

 

価値観、思い、心、ナンダソレ。習ったのは神経の塊のメロンパンが気まぐれにチカチカしているということだけだ。自分の価値感は自分で考えて決めたい。高次な脳機能を活用してそう誓うのに、無意識下で報酬の経路に支配されている。均整の取れていると感じるものに悦び興奮する。

 

夫とは価値観が違う部分が沢山ある。けれど彼は私に報酬をもたらす。得られる報酬にわざわざ逆らわない。感覚的になる。ただ幸せを感じる。これからもっと時間が過ぎたら、私が彼と接する時に使う神経や伝達物質はまた変わるのだろうか。全く勉強不足だ。とりあえず来年も平和に誕生日が過ごせるといいなと思った。