青色信号

雑念

リニュー

佐藤可士和展に滑り込んだ。デザインから希望の残り香がした。昔は工事中のビルを覆う広告を見てワクワクできたんだよな。経済成長を信じられたからできた所業。Z世代のユマが90年代初頭の作品たちを見て感心していた。「エッSMAPのグッズ!かわ!イイ!」ここのところちいかわにしか見えない。私より大きいのに。「陶子ちゃんの世代に生まれたかったなぁー。今よりドラマ凄かったんでしょ?花男とか!」花男について質問されているのに再放送で見たANTIQUE-西洋骨董洋菓子店-を思い出し、Mr.椎名への愛をぶちまけそうになる。展示されていたミスチルのアートワークのせいだ。あのようにカラーの違うメンズが彩るドラマが見たいモンです。ナニキュンとかテンション、閾値の高低じゃなくて奥行きのある快。椎名桔平さん、阿部寛さん、藤木直人さん、タッキー。ヒロインに小雪さん。バランス。バランス……

人間の記憶は時系列ごとに整頓されている訳ではなく、その経路にアクセスした回数によって強化される。私は末っ子で兄と一緒にテレビを見ていたからか、再放送ドラマのほうが思い入れがある。初見は兄に付き合って「?」のカタチで摂取して、再放送によって「!」へ至ったもののほうが定着が深い。日記も出来事からしばらく空けて書くようにしている。星座は見えるひかりの強弱があるから成り立っている。想起のレベルに見合わなかった経路はそれまでだ。小さなキャパの中で不要な物にスポットライトを当てない。自然の生産物。感覚的な場にしたい。ちなみにユマは小雪さんを知らないらしい。時の流れ。展示には申し訳ないがこの日最大の衝撃だった。その晩夫に「清潔で知的で近寄りがたい感じを演出できる20代の女優さんが欲しい。小雪さんみたいな、色気を消した役だったとしても魅力的な」と話した。理想化である。

ミュージアムショップの本コーナーにてたまたま手土産の本を手に取ると、ダーニのガトーバスク(良いチェリー)が紹介されていてビクッとなった。絶対SNSに載せなかった私のとっておき。数ページめくるとLESSのいちごタルト(甘くないウマい)も紹介されていた。内容がツボ過ぎて購入するか迷った。そういえば私の地元にも白金がある。東京にもあったんだ。フクヤマの誤った使用法。どちらもしーんとしていて好きだ。



最近のお気に入りの飾り付けについて。春の味がしますね。


〈ハンドパールピアス@Burberry

陶。藍色好きさ。


〈セットアップ@08surcus

グレーのノースリハイネック・スカート。キュプラは天敵だけど可愛さに勝てなかった。素材の光沢とオチ感が女優。店員さん優しくて好き。


〈腕時計@アルネヤコブセン

内勤用。ミニマリストにウーンというか、日本の若年層の早老化が物悲しくて苦手なんだけど、このデザインはアクセントにもなれば無にもなってくれてつまりは機能美なんですよね。でも未だに今を生きろの窪塚の話で盛り上がる私と友人たちなんだから私らのほうが余程今を生きてないよねって。しかも再放送勢だし。思い出をなぞり書きすることが増えている。おとなぁ。


〈リュック@camper

実家から送ってもらった。目の詰まったラフィア素材のキャメルのリュック。馬鹿でかい専門書を持ち歩く時、スポーティなリュック背負うと芋い。何を隠そう私は犬の鼻息みたいな顔をしている。体育会感よりピクニック感を出していく戦法。camperのサンダル、歩きやすいから良いデザインはファンが瞬殺しちゃう。流行らない。アウトリーチできない。去年ニット素材のオルガ買い逃して今年も出るかなーと思ったら出なかった。


〈シャポーハット@agnès b.

beautifulpeopleAWでダブルエンドのセーラー帽が可愛い!と思っていた。これは一見シンプルな令嬢ハットなんだけど、つばを折り返すとセーラー帽になる。アニエスWeb媒体ではこのアレンジ方法は紹介されてなくて、伊勢丹POPUPに遭遇しなかったら絶対ノーマークだった。シルエットの個体差が激しかったけど似合う物を選べパピネスイズヒア。コットンのブラウスやショートパンツに合わせる。


〈ショートパンツ@b&y

セールで3000円ちょっと。去年の春にレザーのショーパンを購入して便利だったからチェックしてた。私は低身長で腰が細いから(悪い意味で。お腹は細くない。)ARROWSのボトムは体型に合うものが多い。大げさなコットンのブラウスと合わせるためにストレートなシルエットのものを。なんせシャツが似合わない顔。


〈ショートパンツ・ウインドブレーカー@danskin

アディダスステラを愛していた。しかし、こっちに来てから導線上店舗で見る機会がなく遠のいていた。ゴールドウィンで選ぶならノースフェイスじゃなくてダンスキンです。エレッセ似合わない。背が160cm代だったら色々違ったのだろうか。emmiちゃんがセレクト、コラボを経て酷似した色合いのオリジナルウェア作り出し、それがイメージとして浸透しちゃったため、ダスティカラーの雰囲気見慣れて飽きてきちった……GNUと思ったけど実物見ると、機能性がね。良いねー。レキサミとかボーダーズとかのコラボ系は置いといて、ファンに瞬殺されるものとそうじゃないものの目利きが未だにできない。店舗によって置くラインが異なるのもまた困惑させる。んでもって時々アウトレットに良いやつがこぼれ落ちてる。真夏用に青のショーパンを買った。自転車お出かけ用。貼り付かないシャリ素材。快適。SSのやつは薄っすいウインドブレーカーを買った。こういう定番の良いやつは無論ファンが瞬殺してる。去年一昨年は私の顔色が曇る感じのグレーだったけど今年のは色が良い感じ。ジャスミンホワイトにした。UVカット。雨に強い。レインコートって蒸し暑いから苦手。梅雨でも暑くならないほうが素敵。店員さんには相変わらず、「お客様はこちらのほうがお似合いになると思いますぅ」ってフリル付きのものを勧められた。どこに行ってもピンクとフリフリをすすめられる。店員さんに悪意は無いし慣れてるんだけどちょっと萎える。


〈スカート@See by Chloe

大学の時流行りすぎて一時期敬遠してた。ごめんなさい。一見テニスのスコートみたいなスカート。こんなのNiziUみたいなピチパチガールズしか着れないんじゃ〜?って思ったけど試着すると広がり方が絶妙でロリっぽくない。スポーティさも程よくて驚いた。それは私の顔のせいか。動いた時のスリットが結構な色っぽさでビックリするんですよ。そこが良い。健康な色気。金具のカチャカチャ感が強すぎると私の顔と身長から浮くのでシーバイのカバン類は好みに刺さってないんだけど、SSのイチゴのカードケースとお花とフルーツモチーフのスタッズが付いたイブニングバッグは刺さった。欲しい。これなら似合うなぁ。大学生の時ANNA SUIもミュベールも買ってこなかったのに。不思議とときめき。


〈カーデ・ワンピ@JAMAIS VUのコットンカーデとワンピ〉

カーディガン・アニエスベーより・ジャメヴじゃん。モノノベ心の575。


〈スカート@ELIN

ELINのスカートは横から味わうもの。異論は認める。特に新作ではないけどウエスト細く見えて最近愛で愛でしがち。


金平糖ピアス@mame

去年つけなかったのに今年愛が再燃してる。大豆田効果かな?ガラスのぽってり感が気分です。


〈ワンピ@ニアーニッポン〉

一昨年くらいのやつ。真っピンクですべすべのコットン。家でチルする時最高の気分になる。胸元のおリボンが可愛い。


コテン

ホテルニューグランドのフェニックスルームが営業しているとの噂を聞きつけ、すかさずユマと向かった。朝の横浜は好きだ。

ユマは就職で悩んでいるらしい。covid-19で予定していた留学が叶わず何の強みも無いと嘆いていた。不景気により希望の業種が難しくなり、国内大手への就職を考えているようだ。「最初からソコ目指してきた子たちにどうやって敵うのかなぁー」ごめん陶子ちゃんはワカラン。私は専門職だからアドバイスできることが無い。嫌だと思ったら即辞める為に手に職をつけた。それすら縮めて事業をやっているんだから社会人というよりただの変人だ。新卒一律採用の世界かー。転職が当たり前で生きてきた身としては知らない国の話みたいだ。普通に生きるって辛い世界に思える。普通をやらなくて済むのは、自分の美学を押し通すことができるのは、私の努力だとは思わない。素晴らしい社会貢献だと拍手され自分らしい生き方が出来ていて凄いねと言われるけど土台ありきだ。そう。逆逆ゥ。与えられたことに感謝しているから困っている人のための事業をしているだけ。行動して形にした部分だけはちょびっと偉いけど。不平等という平等が与えられナントヤラだし、美人税とか嫌味な言葉って存在するし課題は個人毎に違って当然だ。それぞれが得意なことをやる。それがチーム医療だ。はい話が逸れた。自分の悩んだ経験が無いことへの答え方って難しい。自分がラッキーだったことを理由に誰かに悲しみを所有させちゃいけないと思う。結局アラサー、しかも学生時代ユマより偏差値低かったやつからの言葉なんてただのウザいお説教になるから身の程をわきまえないといけない。距離感を取るのが下手くそなことを自覚しないと。ということで何とも答えられなかった。ユマの長所を沢山褒めた。これで良かったのだろうか。

ESTNATIONのショーウインドウの前で気になっていた鞄が飾られているのを見て足が止まった。「陶子ちゃん、どしたの?」ユマが不思議そうな顔をしていた。「うわこれやっぱ良い、ハマのESTNATIONはまた違った趣きですな」オタクが喋る。「えすとねーしょんてなに?」衝撃が走る。「ん、バーニーズは分かる?」「分かんない」衝撃アゲイン。「TOMORROWLANDは?えーと、ユマBEAMS好きでしょ」「あ!TOMORROWLANDはママがお買い物しているよ。BEAMSは派手だから大好き。でも他のは知らない。大人のお洋服ってどこにあるの?」私の地元はコンパクトに整っているので親に教わらなくとも高校生にもなればお姉さんたち愛用の大きなセレショは覚えてしまう。駅んとこにえすとねーしょんとTOMORROWLAND。その裏の公園沿いにバーニーズのビル、そこからストリート色強めタウン方面に4分程でロンハーマン。お城や海の方面に向かって女学園を通り過ぎるとBIOTOPがある。純度の高いものが無駄なくきちんと並べられている。東京に住んでいると欲しくないものが視界を遮るから、見たいものが見えなくて困る。しかし、私が地元を離れている間に都市計画がガンガン進んでいる。航空関係の法令がOKとなって高層ビルを建てられるようになったらしい。信じられない。帰郷する頃には、私の愛した小さな都は別の姿になっているのか。セレショとその価格帯と毛色の説明をすると「え!今度一緒に行きたい!jwの帽子と鞄が見たいんだけど、どこに行ったら実物見れるのかなって思ってた。私ってイマイチ東京の大学生って感じじゃないもん。ネイティブなのにさー。お洒落になりたい!」と言っていた。私が21とかそれくらいの頃ってセクシーという派閥の幻影を、まだ、ギリギリ、薄っすら、追っていたような気がする。小学生の頃に見たKinKi Kidsをカバーしてる小クラの赤西くんとかPEACHJHONのCMの藤井リナちゃんみたいな小悪魔な色気が欲しくて、いかにしてお姉さんっぽくなるかとエッチなことしか考えて無かったんだけど。イトコのお嬢たちは本当に子犬みたいにホワホワしている。ちいかわっぽい。まず日焼け止めちゃんと塗ろうぜや。

予定より早めに着いてホテルの中を細部まで観賞する。至るところに装飾が施されており、タイルや漆喰彫りの壁や照明器具、絨毯などをまじまじと見つめる。大階段の先の時計を囲う天女の絵がとても好きだ。重厚な木の扉が開くとフェニックスルームの美しさに思わず「わぁ」と歓声が漏れる。桃山様式の絢爛豪華な造りが私達を非日常に誘った。天井の化粧梁と大きな柱が寺院のように荘厳な空間を創り出している。そこに透かし彫りの灯籠風シャンデリアが繊細な華やぎを添える。窓のカーテンの上飾りは花頭形の優雅な曲線であり、床には川島セルコン(大好物)の豪華な絨毯がふかっと敷き詰められている。窓際の席に案内され、年代物のガラス越しに柔らかい光を浴びながらアメリケーヌソースで仕込まれた濃厚なシーフードドリア、フルーツの取り揃えが端正なプリンアラモードをいただいた。食器にもフェニックスの模様が描かれていて、美意識のぬかりなさに痺れる。北欧に飽きた方々の間でふつふつとシノワを取り入れたインテリアが人気になってきているようだ。1人相撲に寂しさを感じていたくせに、同じ土俵に上がられると勝手に入ってくるなとばかりに「私昔からアジアをミックスしたほうが美しいって言ってたじゃん!もぉぉ!」と機嫌を損ねている。みんなアリタポーセリンラボのJAPANを買ってください。絶世のモダニズムジアンビューティ。おプラチナだからレンジもOK。伊勢丹新宿本店と新宿高島屋くらいしか置いてない気がする。あと林九郎のコトホグシリーズもポップさがあって可愛いから。みんなの献金により新作がもっと沢山出てくれることを祈ります。古伊万里しか勝たん。モノノベより。

お洋服はカチューシャにミニワンピ、小物はバーキンにローファーにした。ユマも珍しく襟付きのワンピースにクラッチバッグだった。ユマの足元もローファーで、高校生から履いているというHARUTAの色褪せが美しかった。大人になってからそうするには気が遠くなる機会が必要だ。実際に横浜で見かける人々はイメージと乖離していて、黒基調でスポーティな格好の人が多い。ハイテクスニーカーばかり。公園で遊ぶからなのか。ナンナン。

i

生まれ持った環境とか、フェミニンな容姿とか、選択的で無いものでジャッジされたくなくて、ユニークな服に袖を通してバランスを整える。人の真正面から目を合わせて、できるだけ考えて言葉を選ぶ。そんな毎日だった。最終出勤を目前に突発性難聴になりかけた。耳の奥がジワジワして、すかさず薬を飲んだ。私は持たざる人に出会ったとき心の奥底に沈んでいるブニャブニャの罪悪感が破ける。その中の真っ赤な液体がすぅーと広がる。自分の選択は如何なるものか。罪悪感の皮が破けないように無理をしているのではないか。そんな気持ちになることがある。耐えられなくなり、電車の中で西加奈子さんのアイを読んだ。主人公は金銭的に裕福であり両親からの理解に恵まれている女の子。それでいて賢い。しかしアイは自分のことを不幸に感じてしまう。すごくよく分かる。自分に対して主体的であるかということが当事者意識の正体だと思うんだけど、生きていると選択的なことと選択的でないこととの二種類がある。そして選択的でない部分に対して納得をしていくのは難しい。賢い子ほど納得を探してしまう。アイのルーツはシリアであり、養子だ。私はアイほど劇的な背景を持って生まれてはいない。しかし持っている/持たざるに関する具合の悪い感情は共感せざるを得ない。引け目というヤツだ。


やっと最後の会議が終わる。そう思った矢先にもう1つのプロジェクトについての話し合いを始めると言われた。そんな資料あったっけ?やらかした!そう思って冷や汗を書いていたらオモムロにこれに目を通してね、と分厚い紙を渡された。同僚からの寄せ書きだった。「モノノベさんは、一言でいうと艶やかって感じだからこれにしたの!」上司から真っ赤なラナンキュラスと野草とラフにまとめた素敵な花束をいただいた。浅野温子似の都会的で格好良い女性だ。話した覚えは無いけれど、偶然にも私の世界一好きな花。薔薇よりフンワリした花弁。様々な種類がある。私は変わり咲きの葉牡丹のような形状になるやつが特に大好物。少ししか接点の無かった人たちからも桜の紅茶やハンカチ、今後に役立ちそうな貴重な文献をいただいた。あなたがいてくれて良かったとみんなで労ってくれた。関東に来てから人の親切心を信じられなくなっていた私だったけれど、やっと人間に還った気がする。一生懸命やって良かったと心から安堵した。自分ひとりでは絶対に得ることができない幸福だ。それに浸りつつ心の中の20%くらいは結局人に慰められているな、と思った。慰められながらまた、それが受けられなかった人たちのことを考えてしまう。東京には絶望が渦巻いている。フーと深呼吸してアイをなぞる。私が私であるからこそ、皆は私を愛す。見返りが欲しくて行った行為によって報われている訳ではない。他人の壁にスカッシュすることでしかiを受け取れない訳ではない。絶対に自分の存在が先行しているのだ。アイを読むと自分の感覚を、美しさを、少しだけ信じられる。気づくと赤い塊は萎んでいた。耳の奥のジワジワが治まった。アイを与えるのが苦手だから受け取るのにも苦労する。消えものなんかじゃないし、犠牲なんかじゃないし、焦ることなんて何一つないのに。安心していいんだよ、自分にそう言い聞かせる。

ジダイ

神楽坂の老舗の甘味処でアイスグリーンティを飲む。同僚の20代の女の子は新卒。このあたりの大学だったらしい。モノノベさんが好きな餃子と抹茶で退職を祝います!と連れてきてくれた。私も大好きな街だっのでひときわ嬉しかった。東京のちいさなフランス。今ちょうど山内マリコさん原作の映画が公開されているのを思い出した。彼女がこのあたりのカフェレストランの話を何かの記事でしていたからだ。甘味処の隣の席には男子大学生が6人いた。あからさまにこちらに視線が飛んできてうおおとなる。学校みたいだ。このへんで学生したら楽しそうだなぁ、と思い同僚に聞いてみるも、私の4年間は好きな人とかできなかった。社会人になったら彼氏が出来ると思っていた。チャラチャラした人は嫌だし自分と対等な学歴が良い(早慶かそれ以上)とのこと。しかしcovid-19のため入社式が無くその打算は終えたらしい。対ヒトとのことって事前学習はできないもんなぁ。ふと映画化された小説がよぎる。大切に育てられてきただろう横浜のお嬢さん、世の中には色んな世界があるんだよ。無理したり頑張らなくていいから自分と手を繋いでいてね。そう祈る。


最近の新人たちのメモ。

財布のゆるさに元気のなさが現れている。


ピンキーリング@hirotaka

ダイヤとブラックダイヤがハーフになったデザイン。料理の仕上げにかける胡椒みたい。糸みたいに華奢な地金に黒いダイヤがピリリ。ファランジにもしたいから2号にした。息の短そうなものに中途半端にお金をつぎ込むならこちらのほうが良い。


〈ガーネットのオーダーリング@komi

人に何て言われようとこれは無駄使いじゃありません。シグネットリングにちっこいハートのガーネットを2粒とブラックダイヤを埋めてもらった。キメキメよりおちゃらけた格好のほうが元気が出ることってある。あるある。


〈ハット@Ecua-Andino

去年代官山をふらふらしていて買ったまっ白のチューリップハットが気に入っていた。装飾が無くクリーンなニュアンスを纏える。今年はニナリッチのビジュアルのお嬢さんのようにつばが下がったレディなのものを購入。赤い帽子のクッキー缶の女の子のような雰囲気もある。ブラウンにした。ロマンティックなワンピース類に合わせても良いし、ショーパンに合わせても程よくカチッとしてストリート色を強めないで済む。バケハは顔に似合わない。多少おすまししていたほうがマシに見えるタイプ。


〈キャミワンピ@baum und pfergarten

これはレミニセンス……と呟いたフォト柄。マーブルとタイダイ柄は去年やり尽くしたからもう売る。光沢とハリ感があってクシュッとした素材。新聞をラミネートしたみたいで可愛い。baumは毎回色んな生地感のものを出してくるので好き。キャミワンピって流行り廃りありそう。しかも終わりそう。そんな気がするのだけど生地の質感の魅力に逆らえなかった。


〈アンティーク時計@Hermes

時計に興味がない。そもそも時間を確認することが嫌い。高校生の時に海外ドラマを見て一目惚れして買ったハミルトンのもの1本しか持っていない。4月から仕事で腕時計が必要になると夫に相談したところ、「俺が腕時計を愛でるのは男性がオフィスワークで身につけられる数少ないアクセサリーだからね。女性ものは全然分からないけど、やっぱりCartierのタンクは素敵だと思うよ。男性用のタンクも凄くドレッシーで優美で、欲しい時期があったんだよ」「でも、陶子さんってそこまでのもの必要なの?ガチガチにスーツを着るとは思えないし、女性ならNOMOSUNIQLO化したやつとかで良いんじゃない?(恐らくダニエルウェリントンのこと)」とのコメント。んああ。確かにィ。「あ、俺、大学生のとき買った使ってないNOMOSがあるよ!あげようか?うーん、でも陶子さんは小柄だからフェースが大きいの似合わないかもね」のおお。確かにィ。今売っているブランド時計はレディースでも映え重視なのかフェースが大きい。気がする。探すならアンティークか。ということで銀座。元々時計(というか時間を気にすること)嫌いだし、好きじゃない付け方をしている人が多いせいで、RolexΩに抵抗感が強い。GUCCICHANELは鞄が似合わないから却下。Tiffanyは潔いシンプルさで良かったけど、個人的に付ける人を選ぶなと感じた。ヴァンクリや本命だったIWCロンジンも数が少ないためこれというものに出会えず。Cartierはそれ単体で見たらグッと来るものが沢山あった。細部まで作り込まれた造形や色合い、光沢の扱い方がジュエリーのようで関心した。夫の「ドレッシー、優美」という言語表現が蘇る。明らかに他とは違うアクセサリーとしての技巧の用い方。「Cartierの時計は金字塔」というブランド力を得ることに大いに納得できた。そして相変わらず夫の言葉は信頼できると思った。信頼ってただのファン心で信仰なんだと実感する。私は夫のセンス、すなわち感覚神経のファンなのだ。美しい反面、Cartierの時計はかなり服を選ぶ。バーキンと一緒だ。魅力の強すぎるモノはそれが主役になってしまう。スーツというのは「型」があり枠組み以上の造形にはならないから美しい時計が映えるのだ。バーキンが「合わせやすい名品」なのも、他がシンプルな「型」であれば鞄の魅力が映えるからだ。決して「色んな服に合わせやすいから名品」なのでは無い。バーキンだって「型」から外すコーデはバランスの取り方がかなり難しいと思う。あーこれ表で言ったら叩かれそ。25anscちゃんとか見てたらパワーと経験がいるって思うじゃん。そうして結果、Cartier程ジュエリー色の強くないシンプルなHermesに落ち着く。もっと構えていたけれどお手頃でびっくりした。これだけバーキンに言及するだけあってクリッパーやウォッチではない。無識者の私は知らないモデル。フェースが四角いフォルムで、文字盤のフォントが気取っていなくて良い。デザインのアンティーク感が強くないのでモダンな格好にも合う。

春を感じる

高校生のとき、科目によって席順が違った。50音順。その並びは1番嬉しかった。理由はふたつあって、ひとつは後ろのほうで先生の目を盗んでのんびりできること。もうひとつは、私の後ろにヤナギくんがいること。ヤナギくんは授業中よく寝ていて、突っ伏した頭から伸びる黒髪が私の制服を刺した。痩せ型で切れ目でそんなにお喋りじゃない。パッと見冷たそうなのにクラスの皆からとても愛されていた。

学校生活の他の場面では特段つるんでいなかった。50音のときだけ、お互いなんとなく早く席についてお喋りをした。

「母さんがさぁ、フラワーアレンジメントの教室に通いだしたんだよね。家中薔薇だらけなの。それがカラカラになって、色褪せて、ドライフラワーちゅーの?俺は美しく思えない。吊るされた男みたいに見える」

「ねェ、俺速報。こっそりバイトはじめた。音響のアシスタント。いいでしょ。モノノベさんもこっそり音楽のバイトやってるって聞ィーた。マジ?」

「俺さ、この間話してた看護師のモモちゃんに振られた。ありえん。もー女の子不信。1回味見させてもらったから、まぁ、良い思い出ってことにするけど」

違った。全然。ヤナギくんは人の間合いにスッと入って、話を聞くのが上手い。謎の包容力がある。だからいつもみんなの中心にいる。 そう思っていたのに。50音のヤナギくんは、1人称が多い。

「お願いだからノート貸してー。その代わりに、俺の必殺技を見せてやろう」次の日、私の手に戻ってきたノートには走る馬の絵が描いてあった。筋肉質な馬の体に艷やかな毛が波打っていた。後ろ足で大きく地面を蹴り上げる、ヤナギくんのペラッとした雰囲気とかけ離れた逞しい馬。後で知ったことだけど、お祖父さんは元々画家で美大で教鞭を取っているらしい。私はその日、おそらく初めてヤナギくんに対して言葉をかけた。いつものペラッとしているお喋りじゃない、彼自身についてのこと。「ヤナギくんの鋭い感覚、いつも良いなって思う。心地良い」それを聞いたヤナギくんはニッと笑った。みんなに向ける笑顔とあまり変わらない気がしてムッとした。


2月のある日、午後から天気が荒れて雨が降ってきた。50音の席に着くと後ろから声がした。「今日、傘忘れちゃった。帰りバイト先まで送ってって」バイトのことはみんなに大っぴらにできないから仕方ないよな、それだけの感情で引き受けたつもりだった。しかし、授業が終わると妙に緊張が湧いてきた。昇降口で一緒になって、目を合わせずに横並びで靴を履いた。傘を持って玄関を出ようとした瞬間、ピタリと雨が止んだ。明るくなっていく空を見て「止んだね」と呟いて、私たちは別々に帰った。

次の週の金曜日、また雨が降った。空は濃い灰色で土砂降りだった。50音の席に着くと、いつものように後ろから声がした。「春だねェ」この天気のどこが春なのか。理由を聞くよりも先にヤナギくんは言った。

「俺さ、モノノベさんのうなじを見ると、春を感じる」

思ってもないところを舐められたみたいだった。何かの本で、ひとつ先の季節を意識して体温調整をしたほうが自律神経に良いと読んだ。思春期の私は色んなバランスを崩しがちだった。楽になりたい。その一心で9月になれば髪を伸ばし、2月になれば短くした。私にとっては、ただそれだけだったのに。なんだか急に相手が性的にみえてきてしまった。見つめられる首筋がヒンヤリして、顔はかぁっと熱くて、悟られないように必死で平静を装った。ドライブに連れて行ってくれる年上の彼氏もいたし、決して経験が少ないほうではなかった。なんならヤナギくんより遊んでいた筈だ。なのに、どうして良いか分からない嬉しい感覚にさせられた。

週末、彼氏に会う約束を破った。月曜日、思い出さないように気をつけながら登校した。それなのに、50音になっても私の後ろには誰も居なかった。理由はクラスの誰も知らなかった。もう少しくらい優しくして欲しかった。


最近、髪をバッサリと切った。次々にどうしたの?と聞かれる。秋頃に知り合った人からすると退職を決めてヤケになっているように見えるのかもしれない。「春だから」だ。髪を切るのは。だけど、「春だから」とは言いたくなくて、誰にも言いたくなくて、薄ら笑いで「冬毛を刈ってきました」と言った。「あはは、モノノベさんらしいね、ウケる」と言われた。それで良い。


髪を切った日、帰宅するなり夫が「陶子さんはやっぱりショートが似合うね」と言って抱きしめてくれた。私の扱いが上手だ。しかし、この時期になると短くするという法則にはまだ気付いていないみたいだ。私にとっての春は、暖かいぽかぽかとした日差しではない。首筋がヒンヤリすることに「春を感じる」。まだ当分は私の春はヤナギくんのものだ。

とっとこ直太朗

思うところが無いと書かないのでここを開くと調子のおかしな人みたいだ。主観の塊はコッテリと重たい。


今区役所にいる。ゲンナリしている。まわりを見渡せば高齢者しかいない。若者は働いているから当たり前なんだけど。じゃあって職場に行ったとしても、50代ばかりなんだけど。

私は世の中を知らなかったと本当に思う。緊急性のある医療の現場は2030代が多い。この世の中はどこでも、そのように若者がワチャワチャしていると思っていた。

考えてみれば夜間帯に働ける体力および都合のつく人とは2030代の子供のいない者か殆ど。条件的凝集。それだけだった。


運転免許証の旧姓併記には住民票が必要だそうだ。その住民票に旧姓併記をするには、戸籍謄本が必要。べつに旧姓なんて載っていなくてもいいじゃない。そうなんだけど。

去年、解約を忘れていた銀行口座を思い出した。その手続きに行ったとき、新姓への氏名変更をしていないから解約できないと言われた。

しかもその口座で引き落としを設定している交通系電子マネー(西日本ローカル)でも氏名変更の手続きと解約手続きをしておかないと、登録情報が永遠に宙ぶらりんになるとのこと。

爪の中に汚れが溜まっているみたいで嫌だからきちんと処理しておきたい。そういう仕組みで、手順を誤った私が悪いのだけど。あゞ不服。


最近の記録しておいたほうが良さそうな出来事。昨年から自分の専門分野の決定機関的なところで働いている。そこを年度末で辞めることにした。

大多数の人にはそんなところを辞めるなんて勿体無い、馬鹿だと言われるだろう。

今後のヨノナカことで、大きな方針を変える動きが起きている。医療従事者の端くれとして、ソッと国に中指を立てて終わることにする。同僚みんなの人柄は大好き。とても居心地が良い。それでもNoと思ったらNoを示さないといけない。その中指が突き刺さるのが例え糠であろうと。アラサーにもなるのにこの狂犬病はいつになったら治るのだろう。


4月から久々の長い休みにワクテカして、欲しかった本、洗い替えの綿の部屋着、スパイスの無い沈む系の香水を買った。休む気満点だったのに、2週間後に別の機関からのオファーがいつくか来た。1つは今より条件が良い。収入は上がるのに働く時間は週の半分以下。いっちょ天孫降臨してやろうかと思う。始祖る。みんなが良い医療を受けられるように場を耕す。もしかしたら長い道かもしれないし、途中で予算が降りなくなるかもしれない。甲斐性の無い私は子供を産むことよりも興味がある。自分はメランコリーだからパキパキしたキャリアの人なんて絶対無理だと思っていたのに。図らずもそんな流れになりそうだ。水瓶座が主役で大抜擢される年とはよく言ったものだ。


あまりにも待ち時間が長いので区役所の硬い椅子で好きな作家の本を広げた。ひとつひとつの言葉に大きく頷きながら進む。本を読むことは大事だ。人間を因数分解して飯を食べている私は、ときに数字だけで考える癖がある。だけど、自分自身の優先順位が高すぎると狭い価値観に閉じ込められてしまう。奇想天外に出逢い損ねてしまう。人の厄介さを愛おしく思うとき、人間してるなぁと思う。


自分自身の優先順位を強制的に下げるメジャーな方法は子供を産み育てることだ。母乳だって血液から作られる。価値転換のビッグバン。そりゃワンオペの幼な子の母親はインスタに愚痴るよなと思う。優しさとか思いやりのメカニズム以前に根本の構造的な部分が悪い。皆が子供を産むヨノナカになるのは難しいと感じる。嗜好品のようにセックスしても、子供は嗜好品ではない。この思考を独善的で幼かったと振り返る日が来たりするのだろうか。


新宿伊勢丹本店が切れると機嫌が悪くなるので補給しに行った。唯一可愛いと思ったシャツ。7万。私は肩幅が広い。痩せても背中がデカイ。おまけに乳もデカイ。セットインでアームが細いのが理想。こんなに良いシャツにはもう出会えない気がした。しかし布に7万を使う景気の良さは無い。みみっちくダイヤのルースを買った方が機嫌が良くなりそうだ。


職場の同じフロアで唯一の20代に声をかけた。こんな所で働いているのに、純朴そうな、体育会系の雰囲気の子だ。喋ってみないとワカラナイ。中身が気になる。LINEを聞きだしたので今度こっそりお茶に行く。

みずがめ座

出品していた鞄が売れた。BIOTOPで買ったものだった。ちょうどその日に行く予定だったから笑ってしまった。白金台駅の無機質な感じが好き。コンビニや売店が無くて、地下の細長い穴の中を乾いた風が吹き抜ける。他の濁った駅とは違う。相変わらず乗り降りする人が少なかった。医研の前を通り過ぎたところで、元同僚がLINEのお友達に入っていることを思い出した。早急に整理しよう。通りにはセント・ジェームスショコラティエ・エリカ、可愛く丸い点で区切られた名のお店が並ぶ。ラ・ボエムに入った。このお店の中世ヨーロッパを模した建物が好き。階段、チェッカー模様の床、シャンデリア。寒い時は薄暗くて賑やかなお店についつい引き寄せられてしまう。オリジナルのレモンチェッロが美味しい。飲んだら身体がキッと熱くなった。

BIOTOPPATOUのシャツと再び目があった。もっと彫りが深い顔立ちか、骨太でないと似合わなそうだ。シャルロットシェネのピアスがとても可愛かった。しかしこの値段だったらもう少し頑張ってナチュラルなダイヤを買いたいと思えてきて、結局脱線して観葉植物を買った。しゃきんと伸びたノンリーフ。モードな佇まいで良い。無駄な幅を取らないし、ホッコリ系にも南国風にもならない。家の他の観葉たちの邪魔をしない。オーガスタは好きだけど広い部屋に置かないとトロピカルさが過剰になるから難しいと思っていた。ノンリーフであれ、暖かくなると極楽鳥の花が咲くらしい。肥料の匙加減に気をつけて育てよう。他にはインポートの壁掛けの花瓶を3つ買った。石ころに穴が空いたようなカタチ。1つは素地。残りの2つはネイビーの釉薬がグラデーションになっている。新年度から仕事をセーブするから、もっと家の中をすてきにする。お気に入りの観葉植物のお店を森星さんが紹介してしまってちょぴっと落ち込んでいたから嬉しかった。

白金散歩のあとは好きなジュエリーデザイナーさんのアトリエを予約しようと思っていたけど、気が向かなくて辞めた。その代わりに緑色のヴィンテージガラスのイヤリングを買った。直径3cmくらいのつるんとした大きなカボション。大袈裟なサイズ感が可愛い。ウネウネさせたヘアに合わせる予定。


「求めよ、さらば与えられん」マスムラさんは言った。そしてうふふと笑った。「本当は会社が無くなるって聞いたとき、ショックだったの。あなたにまた会いたいって、妹と話していたの。願いが通じたのね」

マスムラさんは車椅子で生活している。家の中にエレベーターこそあるものの、一歩外へ出るとまわりは悪路なため1人で外出することができない。彼女は新しく買った黒のバーキンをベッドサイドに置いていた。金具がガンメタリックで格好良い。無駄だと言う人もいるらしい。しっとりと肉厚でなめらかな皮革が美しかった。私はバーキンの側面の革が柔らかいヒダを打つのがとても好きだ。価値なんて自分の中だけで良い。大勢の人がなんと言おうと。

『求めよ、さらば与えられん』富裕層向けの仕事でよく耳にする。信仰とは無関係に。私が松濤生まれだったら何を求めただろう。変態に金を持たせたら危なそうだ。私は庶民に生まれて良かった。

夫がフィービー時代のセリーヌのピアスを買ってくれた。アクセサリーもフィービーがデザインしていたかは知らない。あの時代のやつ。ノットデザインよりコンサバしていない、重なり合う線が知恵の輪ような、遊具のような。コンテンポラリーなシルエットが可愛い。どれだけ眺めていても可愛くて仕方がない。発売当時欲しかったけれど買えなくて、ずっと中古を探していた代物。何年も探しているアイテムが多すぎて笑う。つくづく趣味が変わらない。フリマアプリなんかで系統が変わったので売ります。とよく目にする。それを真に受けると柔軟で羨ましいと思う。注入されたものを養分として育った。三つ子のプチバトー百まで。ミヤケは百まで踊り忘れず。ヨーガンレールのバーゲンセール。

探していたピアスの発売当時は研修や勉強にお金を注ぎ込んでいたため、資金を捻出できなかった。別にそのことを夫に話ていないのに寄ってきた。『求めよ』というヤツか。因果関係?星の廻り?否定したい。カルトにハマる人はIQが低いという論文を読んだ。それを鵜呑み済なのに。

スピ信を散々馬鹿にしつつ、自分がみずがめ座なことは好きだ。変人博愛芸術家。12年に一度のみずがめ座イヤーだの言われているが、実はあと200年くらいはみずがめ座の時代らしい。結構気分が良い。最近生きるのがダルいと感じることがちょくちょくあるので今年はご機嫌直しにタロットでも習おうかな。